幕間 第30.5話「空話〜独りの夜〜」
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い音を空気に響かせていた。
「……」
視線は自然と再度空へ。欠け始めた月が、それでも一帯を明るく照らし出している。元々、月明かりだけでも夜は十分に見通しが利くことを再度この地では認識させられる。
そんなことをつらつらと考えてしまう。
――さようなら。
「……っ」
これで何度目だろうか、頭を振ってその言葉を追い出そうとする。
だが。
――キミに恋をしていた。
目を閉じるたび、彼の言葉が耳にまとわりついていた。言葉だけなら嬉しいはずのこの台詞も、あの状況で言われてしまっては、逆にこちらを傷つける役割しか果たさない。
――なぜ、さようなら? 何がさようならだというのだろう……? 死ぬとは一体?
彼の全てが謎で、心を狂おしいほどに締め付ける。
「……はぁ」
再度、ため息。
明日には大事な一戦がある。おそらくはマナとの一戦が自分を待っている。そのためには少しでも寝ておかなければ、いざという時に寝不足で力を出し切ることが出来なかったなど言い訳にもならない。
三角座りの体勢から腕を解き、地面に背を倒して寝転がる。
澄み渡った空には雲ひとつなく、今の心情とは見事に真逆を表していた。
「……いかんでござるなぁ」
――こんなことで心を乱していては。
忍びとして、何事にも乱されない集中力をつけなければならない。
それはわかっている。
わかってはいるのだ。
「……」
心地よいほどに風が肌をなで上げ、どこか優しい。
――ふふ、まるで自分を慰めてくれているようでござるなぁ。
そして、それを認識した途端だったのかもしれない。
彼女なりの精一杯で浮かべた笑みは形を崩し、気付けば目の端からは一筋の涙が。
今まで必死に修行を積んできた。
誰よりも一人で、誰よりも激しく、誰よりも辛く。
それを苦と思ったことも、逃げ出したいと思ったことも、ないといえば嘘になる。だが、諦めようと思ったことはない。
それが当然で、そうあるべきだったから。
だけど。
ただ、ほんの少し。
心の底に秘めていたクラスメイトへの憧れ。
例えばあの人に告白された、例えば告白した、付き合った、ふられた。自分には決して関係のない世界だと断ち切るには少し、身近すぎていて。
だから、だろうか。
『……好きだ』
初めてされた告白は単なる惚れ薬。
初めて女の子としての胸の高鳴りを覚えた。
『ご飯ござる〜』
山の中で偶然出会い、晩御飯を共に。
いつしか意識するようになっていた。
『ほら?』
手を差し出した。
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