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幸せの箱探し
5章 【動機】

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 「今から5年前の話だ。」

 女の霊は僕に話し始める。

 「私にはその時、彼氏がいた。とても優しい人だった。だけど、ある日私は、

 彼氏が麻薬の取引をしているところを見てしまった。

 そして、その日から頭の中では、早く別れた方がいいんじゃないか、という事ばかり

 考えるようになった。だから、ある日。私は彼氏に別れようと言った。

 勿論彼氏が理由を聞いてきた。そして私が見てしまったことを正直に話すと、

 あっさりと受け入れてくれた。それで終わったと思っていた。

 でも、そんな簡単に終わるはずなかった。彼氏は、私が麻薬取引の事を警察に言われるのを恐れて、

 私を知っている親しい人が殺されていた。私は家族も失った。友人も失った。全て失った!

 だから私は自殺した。だってそうだろう。生きている意味がないのだから……

 だが、私は幽霊になっていた。後から考えて、これは神が与えてくれたチャンスだと思った。

 私は彼氏に復讐するため、彼氏の家に行った。だが、彼氏は首を吊って自殺していた。

 怒りが収まらなかった。そしてある時気が付いた。この憎しみや怒りを他の幸せそうな者にも

 味わってもらおうと、『幸せの箱』の噂を広めたのさ。幸い、物はある程度軽いものなら

 簡単に動かせるしな。」 

 「それで僕はお前の罠にハマったのか。」

 「そうだ。」

 「いつまでこうするつもりだ。」

 「お前以外の者もここに連れてきてそいつらの家族や友人を殺してきた。

 だが、それでも怒りが収まらなかった。まだ、あの世に行けないのかもしれない。」

 「そうか。」

 「だが、今回。初めてわたしは負けた。もしかしたら私もこれであの世にいけるかもしれない。」

 「そうか……」

 僕が呟いたと同時に、女の霊の体が光りだした。

 …………こいつはあの世に行くのか…

 「やっとあの世にいける…」

 「やっと元の世界に戻れる…」

 「あっ!そうそう、お前には私からプレゼント(・・・・・)があるぞ。」

 女の霊は髑髏を想わせるように、不気味に笑った。

 「…まさか……」

 僕は、元の世界に戻った。
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