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打球は快音響かせて
高校2年
第三十五話 フィーバー
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良い気分を思い切り害されて、翼は閉口した。

「なぁ、これ見てや!浅海先生!地方紙の一面になっとーよ!」
「うわ、ホントだ。」

宮園と鷹合の2人はあっさりと無視して、大江は自分のカバンの中から丸めた新聞を出して広げて見せた。準決勝の水面海洋との試合の日付である。“三龍 海洋突き放し初の決勝”の見出しに、ベンチで佇む浅海の横顔の写真。小見出しには“名称・高地監督に競り勝った策士”とか、“美人すぎる高校野球監督”とか、とにかく浅海が持ち上げられていた。すげー。翼は他人事のようにそう思った。

「カッコ良いな〜。国語の授業もめっちゃ分かり易かったし、ホンマこの人有能っちゃけん!」

大江は目を輝かせる。浅海は意外にも、女子人気がかなり高い先生なのだ。少しクールな人となりなので、惚れる男子よりも、大江のように目標として憧れる女子が多い。“カッコ良い”という評価には、翼も同意できる。乙黒よりも余程、生徒を引っ張る気概もあるし人望もある。

「州大会は水面での開催やろ?全校応援とかなるんかね?」
「多分なるよ!今生徒会が応援練習の段取りしよるけん!」

山崎は授業が休める事に大きくガッツポーズし、大江は浅海を全国区にする為に応援すると意気込んでいた。翼は苦笑した。
勝てばこんなに、周りが盛り上がるのかと。
まるで他人事のようにしか思えない程の一大フィーバーだった。



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<from:葵
件名:おめでとう
水面で2位!?ほんで、州大会!?
凄いよ翼!翼がそんな強いチームのベンチに入りよるやなんて、中々信じられません。
いや、翼の事見くびりよるんやないんよ、でもね、凄すぎて中々実感湧かんよね^^;
めっちゃ頑張ったんやなぁって……>

寮の部屋に戻った翼は、葵からのメールを読んでいた。この彼女は毎度毎度、まるで自分の結果のように素直に喜んでくれるものだ。
これが最近、翼の活力となってきている。

<……州大会は水面でやるんよね?平日やけど、あたし、絶対見に行くけん……>
「何ッ!?」

翼はベッドから起き上がった。葵が自分の野球を見に来る。草野球なんかをしていた自分とは、違う自分を葵に見てもらえる。翼の気持ちは奮い立った。オフだからと言って、ゆっくりしている場合などではない、クラス会などに現を抜かしてる場合ではなかった。翼は居ても立っても居られずに、自分の部屋を飛び出して自主練習に向かった。

だから、メールの続きを読まなかった。

<…というのもね、南学も木凪・瑠音地区で優勝して、その応援に駆り出されるけん水面まで行けるんよ!ほやなかったら、平日には中々休ませてもらえんけんね。感謝感謝……>


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「葵さーん
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