幼い日の思い出
何も言わずに
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里の人間でも数人だけが立ち入りを許されたある場所にて。
珍しく火影から呼び出されたイタチは、いつも行っている「カトナの監視」という任務を放棄して、火影の前に立っていた。
額に巻かれた木の葉の忍びである証拠が、薄暗い部屋の中に微かに差し込む光を浴びて、鈍く光る。
そんなイタチを見た火影は、ただ無言で首を振り、机の上に置かれた紙を指で示した。
珍しい。
そう思いながらもそれを読み上げたイタチは、知らず知らずのうちに、眉間にしわを寄せた。
報告書。
無機質な、感情など全く何も感じないのではないかと思うような筆跡で書かれた紙を、苛立たしげに受け取った。
これがなんなのかと彼は問うような視線を、悲しげな顔をした火影を向けた
何も語らず、ただ沈黙を保っている、この里の長は、ただの「うずまきカトナ」ではなく、「九尾の人柱力」として書かれた報告書に対して目を伏せる。
報告書には、ある言葉と、それに踊らされた人間の憎悪が事細かに書かれていた。
『九尾は隔離して、監視した方がいい』
一瞬のうちに、イタチの脳内に赤色が走った。
ちかちかと彼の目を赤く光らせたそれは、無意識の内に拳を固く握りしめさせた。
九尾。
それが指す人間は、この世でたった一人しかいない。
本当は、一匹をさすはずなのに。一匹しかささない筈なのに。
この里では、それを封じられた英雄と、その英雄を守るために自らを犠牲にした少女のことを、蔑称として呼ぶ。
いつだって、彼らに付きまとうその言葉。
『監視の報告書を見る限り、うずまきカトナが九尾を暴走する可能性は低いとみられるが、零と言いきることが出来ない。
四代目火影が直々に封印したものとはいえ、封印術は精密な作業が強いられるものであり、体の成長と共にチャクラの総量が増えだせば、九尾のチャクラを封印する術式だけでは抑えきれなくなる可能性もある。
また、九尾のチャクラは感情的になることで放出される可能性もあるため、一概に、あれが危険ではないと判断すること出来ず、監視は更に強化するか、あれを殺すことで九尾も殺すなどの対策が』
最後まで読むことは、できなかった。
ただ、ちかちかと、視界の中で赤い光が瞬いていた。
体中を激怒が焼く。殺意が身を包んだ。
肌が炎でじわじわと嬲り殺されるように、熱が内側から体をいぶしていく。怒りが血管の中をめぐる。
体が熱い、火傷したようだと思う部分が、一瞬の間に潰れていく。
いつも強いているはずの冷静な思考が、うまく出来なくなった。
怒りに身を任せ、それをぐしゃぐしゃに握りしめて。
そこでようやく、感情の波が落ち着く。
はっとして、自分の手元に目を落とす。ぐちゃぐちゃになったそれが報告書だということだと
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