幼い日の思い出
何も言わずに
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持ち主。
彼のような人間がどうして、九尾の監視をしているのだろうか。こんな仕事は雑用に任せてもいいはずだ。彼ほどの腕ならばこんなくだらないことをしている間に、多くの任務をこなせるだろうに。
暗部は面の下でわざとらしく顔をしかめる。
イタチは写輪眼で男の行動を見抜き、微かに口の端を歪ませる。
今、イタチが写輪眼で観察した暗部にとっては、九尾の任務はこれから先に自分が進む栄光の道への踏み台でしかないのだろう。
彼らを、カトナを、九尾の人柱力としか見てない。
カトナが、どれほどナルトという弟の為に自らの身を砕き、自らの心を折り、自らの弟の為になら命さえも捧げ、崩れそうなほどの危うさで、弟を支えているのか。
一度でも彼女と会ってしまえば簡単に見抜け、言葉にする前に分かりそうなものを、彼らは「九尾だから」というくだらないフィルターをかけ、カトナの本質を見抜かない。
彼は、カトナに向けられる罵詈雑言を放つ人間たちの姿を思い描きながら、吐き捨てた。
―気持ちの悪い
・・・
「お前なんか、生きていなければよかったんだ!!」
がんっ。
大きな、十歳くらいの子供の握りこぶしほどの大きさの石が、カトナの頭に当たる。
衝撃を殺しきれず、カトナはなすすべもなく、その場に倒れ込んだ。
だらだらと、石が当たったその場所から血が溢れる。
痛いと少しだけ思って、それでも彼女は何の叫び声も上げない。ただ、急所に当たる頭を両手で守りながら、その場に小さく丸まった。
その弱弱しい姿に、更に自らの奥から湧き上がる感情に身を任せ、男は勢いよく蹴りを叩き込む。
カトナの体内で、ぼきりと、音がこだました。
「――っ!!」
流石に息を呑み、小さな悲鳴を漏らす。
その姿を見た男は、憎悪をたぎらせた目で少女の体をもう一度強く踏む。
自分でも気が付いていないのだろう。その瞳の奥には、悪意などという言葉では到底すまされない、愉悦などといった感情が潜んでいることに。
男は、悲鳴を殺すカトナの姿が泥まみれになっていくのを見て、その言葉を吐き捨てた。
奇しくもそれは、イタチが彼等のような人間に対して吐いた言葉と、全く同じものであった。
「気持ち悪い」
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