幼い日の思い出
何も言わずに
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い感情を、どこにぶつければいいかわからない感情を、それらしい理由が付けてある存在にあたる。
それがどんな存在であって、傷つきやすく脆いのかを知っていながらも、知らないふりして逃げる。
愚かで矮小、卑小すぎるそれらこそが、カトナをこれからどうするかの権利を持っている。
それが悔しくて、無力な自分が口惜しくて、一刻も早く強くなりたいと強く思う。
けれども、イタチはまだ子供でしかない。
どれだけ強かったとしても、どれだけ最年少だなんだうたわれたとしても、大切な弟の。そして自分の友達を、大切な、自分にとっては兄弟のような人間を、守りきることすら出来ない。
いつだって、彼らに守られている。
自分とが監視につくことを迫られたとき、イタチは自分の意思でそれを選んだのに。人柱力だからと罵られていた彼らが、サスケと同じような小さい子供であることを知り、支えてやりたいと思って選んだのに、悪意が溢れかえった時があった。
あれほどまでに優秀な子供を、どうして九尾の為に使うのか。もったいない。
そんな、悪意が煮詰められた言葉は、最初はカトナだけに向かっていた。
だが、時を追うにつれて、その悪意はカトナだけではなく、カトナの監視を望んでするイタチにも向かうようになっていった。特に同族意識の強いうちは一族は顕著なもので、イタチに対してよくない噂が流れるようになっていた。
そんな折、カトナが問題行動を起こすようになった。
イタチ以外の大人に監視されると酷い癇癪を起して、一歩も部屋からでなくなったのだ。イタチが監視の時は前までと態度が変わらなかったのに、イタチ以外だと嫌がるようになった。
彼女らしからぬ行動に、火影とイタチは困惑した。
彼女は周囲が思うよりも聡明だ。記憶力もよい。
そんな彼女が自分の評価をさらに悪くするような行動をとることが理解できず、戸惑ったイタチは、それからほどなくして真相を知った。
彼女はイタチに向かっていた悪意を奪うために、わざと手間がかかる子供を演じたのだと。
誰よりもいち早く、イタチよりも早く、周囲の悪意を悟ったカトナは、自分に悪意を集中させるための策を打った。
大人に対して警戒心が強い子供を演じることで、イタチしか、子供でありながらも九尾を抑え込めるほどに強い彼にしか、それが出来ないと、そう思わせた。
すべての悪意を引き受けて、すべての害意を集中させて、彼女はイタチから悪意を奪った。
守られたと、そう思うしかなかった。
自分で選んだのだと言っても、周りは聞かなかった。
お前は無理矢理させられただけなのだと、あの子供が悪いのだという言葉は、あとを絶たなかった。
自分に向けられたはずの悪意が、カトナという小さな存在に突き刺さるのを、黙って見ていた。
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