暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
記憶の中で少女は笑う
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を待たず、サヤは呟いた。
その顔から微笑みが消える。
瞳に冷たい光が宿った。

「だったら・・・消さないとね」
「サヤ!」
「ルーと一緒にいるのはあたしなんだよ・・・その子でいいハズがない!」

狂ったように、サヤが叫んだ。
それと同時に、凄まじい勢いでナイフが投擲される。
空気を切る音を響かせながらルーシィへと向かって行くナイフは――――


大空風流(アリエスカレント)!」


操られた空気の流れに巻き込まれ、右へと進路を変えた。

「・・・ルー」
「はぁっ・・・ダメだよ、サヤ。ルーシィを傷つけたら」

苦しそうに息を切らしながらも、ルーは精一杯微笑む。
サヤの目から鋭さが消えた。
穏やかな微笑みが戻ってくる。

「・・・ねぇ、サヤ」
「なぁに?ルー」

サヤは首を傾げる。
そして―――――ルーは、ルーシィが驚愕する一言を吐き出した。





「僕が天国(そっち)に行けば・・・ルーシィには何もしないんだよね?」





言葉の意味が、理解出来なかった。
理解したくなかった。
ルーシィの目が静かに見開かれて、頬を汗が伝う。

「うん。あたしに必要なのはルー・・・ルーが来てくれるなら、その子には何もしないよ」
「約束、出来る?」
「もちろん」

こくり、と素直にサヤは頷く。
その返事に満足したようにルーは微笑み―――――1歩、踏み出した。

「ちょ・・・ちょっとルー!アンタ何するつもり!?」
「ごめんねルーシィ・・・僕、ルーシィの返事は聞けないみたい」
「ルー・・・?」

慌ててルーシィが声を掛ける。
返ってきたのは、どこか弱々しい声だった。
弱々しくて、どうしようもなくて、今にも遠くに行ってしまいそうな。

「ルーシィ」

くるり、とルーが振り返る。
その表情はギルドで毎日見る、愛らしい笑顔ではなく。
穏やかで、弱々しくて、儚げな―――――遠い微笑みだった。






「大好きだよ―――――――――これからも、ずっと」






そんな事、とっくに知っている。
だって毎日、ルーはそう言っていたから。
子犬と評される笑みを浮かべて、時には悪戯っぽく笑って、くるくると表情を変えて、いつだって真っ直ぐに好きだと言っていた。
その言葉が・・・こんな遠くに感じる事は初めてだった。

「さあ・・・行こっか、サヤ」
「・・・待ってたよ、その言葉を」
「ルー!ダメだよ!そんなのっ・・・!」

サヤの手には、ナイフ。
そしてルーは、無防備。
ルーが何をするつもりかなんて、考えなくたって解った。

「それじゃあ・・・」
「ルー!」

必死に叫ぶ。
ルーの目を覚まさなければ、という
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