記憶の中で少女は笑う
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―目の前で微笑むサヤという名の少女は、ルーシィにそっくりなのだ。
揺れる金髪も茶色がかった瞳も、声も。
「よかった。あたしの事、忘れたんじゃないんだね」
「忘れてなんかないよ・・・ずっと、会いたかったんだ」
「うん・・・あたしも会いたかったよ、ルー」
サヤの言葉に、ルーは今にも泣きだしそうな表情を無理矢理微笑ませ、答える。
それに安心したように、サヤは目を伏せた。
「だから、ね」
微笑みは変わらない。
雰囲気も変わらない。
ルーの記憶の中と変わらない姿のサヤの左手に、鈍い光が見える。
「あたし、ずっとルーと一緒にいたいから・・・」
ふわり、と微笑む。
ゆっくりと、左手が上がる。
先ほどまでと何も変わらない優しい微笑みで―――――サヤは告げた。
「あたしのいる天国に、ルーも来て」
鋭く、斬り裂いた。
何が?―――――サヤが投げた、ナイフが。
何を?―――――驚愕するルーの、右肩を。
「っ――――――――!」
視界に飛び散る血が映り、ルーの目が見開かれる。
重力の通りに血が落ちて―――――ズキリと、肩に痛みが走った。
「ルー!」
「来ないでルーシィ!大空治癒!」
慌てて駆け出そうとしたルーシィを止め、ルーは肩を抑えて治癒系の魔法をかける。
淡い緑の光がゆっくりと傷口を塞いでいく。
数秒後には薄い傷跡と破けたブレザー、シャツだけが残った。
「あ・・・そっか、ルーって治癒も出来るんだっけ」
「サヤ・・・?君、一体何を・・・」
「あたしはただルーと一緒にいたいだけだよ」
ルーの言葉を遮るようにしてサヤはいい、再びナイフを投げる。
「くっ・・・」
苦しげな表情でルーはそれを避け、サヤに目を向ける。
10年前の記憶と何も変わっていないサヤの姿。
だが・・・ルーの知るサヤは、ナイフなんて投げられない。
「ルーもあたしのトコにおいでよ。ずっと一緒にいようって、約束したよね?」
「ぐっ!があっ!」
「ルー!」
微笑んだまま、連続でナイフを投擲するサヤ。
ルーはそれを避けていくが、時折ナイフが足や腕を斬り付けていく。
それに合わせて治癒をするが、ペースが遅く間に合わない。
「ねぇ・・・どうして?あたしはルーと一緒にいたい。ルーは、あたしと一緒にいたくないの?」
「それはっ・・・!」
「その後ろにいる女の子の方が、好きだから?」
「!」
後ろにいる女の子―――――つまり、ルーシィ。
自分が成長した姿のようにそっくりのルーシィに目を向け、サヤはナイフを握りしめた。
「そっか・・・ルーはその子の方が好きなんだ」
ルーの答え
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