第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十日:『千里の道も一歩から』
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矢』等は名が売れたかもしれないが。
「あれ、対馬先輩……?」
「ん――おお、蘇峰。何してんだ、こんなとこで?」
背後からの声に振り向けば、そこに立っていたのは白皙の美少年。嚆矢の後輩の合気道部主将である蘇峰古都である。
夏休みだと言うのに学生服に身を包んだ彼は、やはり汗を拭っていた。
「停電があったので、此処に入院している祖母の事が気になって……対馬先輩は、風紀委員の活動ですか?」
「おぅ、『虚空爆破事件』ってあったろ? あの犯人が倒れてな、もしかしたら『|幻想《レベル――――」
「――対馬さん!」
百五十に満たない小柄な古都と百八十前半の嚆矢が並び立てば、差は歴然だ。
否、今はそんな事はどうでもいい。問題は、つかつかと詰め寄ってきた黒子だ。
「部外者に事件の情報を漏らすなんて、何事ですの! 全く、貴方には風紀委員としての自覚が足りませんわ!」
「うぐっ……ご免なさい」
至極当たり前の事を、年下から怒られてしまった。後輩の前で情けないとは思ったが、悪いのは自分。甘んじて受け入れた
「おい、常盤台の……年上の、しかも男性にその口の聞き方は何だ? 『学舎の園』では、目上の相手への礼儀すら習わないのか?」
「あら――随分と前時代的な事をおっしゃいますのね? 流石、『武の頂』と言われる弐天巌流だけに、生徒は武骨しかいらっしゃらないんですの?」
「前時代的なのはそちらも同じだ、女子だけの共同学舎? 聞こえはいいが、要するに人の半分を排他した隔離病棟だろう、常盤台」
「な、なんですって……!」
「お、落ち着け古都。ほら、ここ病院だぞ?」
「そうよ、黒子。風紀委員が風紀を乱してどうすんのよ」
嚆矢を庇うように立った古都が、黒子と舌鋒を交える。大声に自然と衆目が集まり、慌てたのは嚆矢と美琴の二人。
「と、ところでやだなぁ、対馬さん。さっきの電撃は十万ボルト有るか無いかだし、第一、私のMAXは十億ボルトですよ」
「ちょっとやだこの娘、殺す気満々だし、神の五倍の出力有るよ。誰かゴム人間呼んできてー、金塊も持ってきてー」
二人の諫言の間と場を和ませようとする下らない寸劇の間も、緊張が高まっている。
まるで矢を番えて引き絞られた弓の弦のように、今し切れんとする伸びきった護謨のように。
「第一、これは風紀委員の内輪の問題ですの。部外者はひっこんでいてくださいですの!」
「貴様――!」
それが、弾ける。今にも能力者バトルに突入せんとした黒子と古都、その二人を――
「いい加減にしろって――――!」
「っ――ぐっ?!」
少しだけ、表情を強張らせた嚆矢が古都の腕を背中に回して締め上げて。
「――――言ってんでしょう
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