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打球は快音響かせて
高校2年
第三十四話 粘り
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ット→バント→ヒットの正攻法で点を取り、相手の送りバントは全部素直にやらせてアウトカウント一つと引き換えにランナーを進めさせ、そこからバッター勝負。盗塁やエンドランにも、バッター勝負の意識は揺らがなかった。自ら動かない代わり、相手の揺さぶりにも全く動じない、“不動”のチームが出来上がった。

「私は、何にもしておりません。選手らが、何もしなくても私を引っ張って甲子園に連れていってくれました。本当に感謝しています。」

これは夏の甲子園でのメディアの取材で、丸子監督が残したコメントである。



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3-3。水面地区秋の陣の決勝戦、三龍対水面商学館の試合は、5回を終わって同点。実力伯仲の好試合となっている。

(勝てたらええなぁ。そしたら、チームに勢いもつくけんなぁ。)

ベンチで足を組んで座っている丸子監督は、この均衡した展開にも、リラックスした様子を崩さずに無精髭をさすっていた。その視線の先には、三龍ベンチで選手を集めて熱っぽく語る浅海の姿。

(あの娘、一生懸命やな。監督の自分が勝たせてやろう思うて、必死なんやろうなぁ。)

丸子監督はフッと笑った。浅海の姿を、微笑ましく見ていた。

(高校野球の監督なんて、自分が勝つもんやない、勝たせてもらうもんよ。やるべき事は選手の迷いば取り除く事。そしたら、こいつらは本当に生身の“勝負”ができる。勝負やけ勝つ事も負ける事もあるけど、例え負けてもそれもまた勉強ばい。で、勝負するんは選手やけ、監督は口を出し過ぎんでええんや。)

丸子監督は戦わない。むしろ、選手を見守る。
戦略を否定し、野球の実力そのままでの勝負を挑ませる。勝つ事よりも、その事を大事にする。若いのにも関わらず、達観したような見方の監督、それが丸子克哉である。

(めちゃくちゃ勝ちにこだわっても、勝ちがええ事とは限らんし、野球から学んだ事さえ持ってりゃ、後の人生何とかなっていくんやけん)

無精髭をさする丸子の左腕は、微妙な角度に曲がっていた。肘には、大きな傷跡がついていた。



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<水面商学館高校、シートの変更をお知らせ致します。ファーストの浦田君がピッチャー、ピッチャーの三田君がショート、ショートの室尾君に代わって岡野君が入りファースト。1番ショート三田君、5番ピッチャー浦田君、8番ファースト岡野君、以上に変わります>

グランド整備が明けた6回表。商学館のマウンドには、エースの浦田が上がった。昨日の準決勝では球数100球足らずで7回コールドゲームを投げ抜いているが、余力は十分。志願してこの決勝のマウンドに上がってきた。

(本当は三田に完投さして2番手に目処をつけておきたかったけど、ああ強く“俺が投
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