第58話 肉体死しても魂死せず
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士と同じ境遇になったら……か―――」
フェイトの問いに銀時は暫し黙り込んだ。彼もまた言ってしまえば父親だ。違うのと言えば林博士と芙蓉との間は血の繋がった親子であろうが、銀時となのはは違う。二人には血の繋がりは全くない。
だが、例え血のつながりがなくとも銀時にとってはなのはは既に自分の娘の様な存在になっていた。9年前に万事屋の階段下で拾ってからずっと銀時はなのはを育て上げて来た。
それこそ、幾度かは喧嘩もしたし途中で育児を投げ出そうと思った事もある。だが、今ではそれら全てが良い思い出として銀時の中に残っているのだ。
その結晶とも言えるなのはがもし、突然自分の前から消えるような事があれば、自分はどうなるだろうか?
林博士や、はたまたプレシア・テスタロッサの時と同じようになのはを生き返らせようとするのだろうか?
それとも―――
「ま、一概には言えねぇけどよ……これだけは断言出来るぜ。俺は、絶対に死人を蘇らせるような真似はしねぇ」
「どうして? 死んでしまったら一生会えないのに、銀時はそれで良いの?」
「確かに、死に別れは辛ぇさ。だけどな、生きてる奴がてめぇの勝手な都合で死人を蘇らせるのは余りに身勝手な事だ。どうしても会いたいってんなら死ぬまで辛抱してりゃ良い。そうすりゃあの世でまた会えるからな」
それが銀時の答えだった。もし、なのはが死ぬような事があっても、銀時は決して彼女を蘇らせたりしないだろう。死人を生き返らせる事など実際不可能な事なのだ。それに、例えそれが出来たとしても、そんな事に手を染めればあの人が悲しむだろう。
銀時はあの人の悲しむ顔だけは見たくなかった。
「それになぁ、死に別れたって言っても今生の別れじゃねぇんだ。肉体が死んじまったとしても、その魂は生き続けるんだよ。生前に関わった奴等全員の中にな」
自分の胸にドンと手を押し当て、自信満々に銀時は語る。彼の中には今まで出会い、そして死に別れた多くの人達の記憶と、そして魂が刻まれている。この記憶と魂を生きている間ずっと持ち続ける事が今生きている者達の成すべき事だと、それが銀時の人間性だった。
「なんだか、銀時って母さんと違うね。母さんだったら絶対に自分の娘を生き返らせようとするのに」
「ま、人それぞれって奴だろうよ。俺やじいさんみたいにハートの乾いた連中はスッパリ諦めがつけるのが取り得って奴だしな」
「おい、俺を引き合いに出すなよ!」
自分まで同じ穴の狢にされたのを余り嬉しく思わなかったのだろうか、源外が口をへの字に曲げて銀時を睨んだ。
「私もマミーが死んじゃったけど、でも生き返って欲しいなんて思った事はないアルよ。だって、マミーは空の上でずっと私を見守ってくれてるから、だから私はちっとも寂しくなんかないネ」
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