第三十五話『選ぶ道』
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「……ふむ」
夜、9時を回った辺りにスウェンは端末を見ながら廊下を歩いていた。
端末に記された内容は今回のトーナメント戦についての事項だ。
VTシステムにより、学園は事故という名目でトーナメントを中止。端末には各個人のデータはとる模様であると記載されていた。
スウェンは端末を閉じ軽く溜め息を吐き
「……前の代表戦でもトラブルがあって中止。そして今回のトーナメント戦も事故とし中止……学園として良い物なのか、ここまでの中止の連続は……」
また今後もトラブルが起きればその開催されたものは中止になるのでは?とスウェンは毒づく。
「まあもっとも、俺が気にしても仕方がない……か」
「よっ、スウェン」
「?」
不意に肩を叩かれ、一夏が顔を覗かせる。
「一夏か……どうした?」
「山田先生がさ、男子の大浴場が解禁されるって言っててさ。一緒に行かないか?」
「……すまない、今日は気乗りがしなくてな。またの機会にさせてもらう」
「そっかじゃあ仕方ないよな。シャルルの奴にも断られたんだよなぁ〜」
「(当たり前だろう、デュノアは女だからな。まあこいつは知らないから仕方がないか……)」
残念がる一夏を尻目にスウェンはそう頭で呟く。
「あ、そういやさ、スウェン」
「何だ?」
「何で俺のこと名字じゃなくて名前で呼ぶようになったんだ?」
「……別に深い意味はない。だが強いて言えば……」
スウェンは一夏の隣に立ち、肩に手を乗せ
「信頼できるから……かもな」
「え?」
「それではな」
軽く笑いながら、スウェンは一夏から手を離し廊下を歩いていく。
※
知らず知らずに時間は過ぎていくもの、スウェンは夕食を終えシャワーを浴び、寮の外に来ていた。
「……」
何も言わず、ただ夜空を見ていた。そんなスウェンを見ている少女が1人。
「スウェン……」
木の陰からスウェンの様子をずっと見ていた簪がそこにいた。
「……そこにいるのは、簪か?」
「ひぅ!」
突然声を掛けられ、簪は恐る恐る木から離れスウェンの前に姿を見せる。
「何でわかったの?」
「そんな気がした」
「ま、まるで私が何時も物陰から見てる人みたいな言い方だね……」
「……気を悪くしたならすまない」
謝罪の言葉に簪は首を横にふる。
「別に……気にしてないから。スウェン、何してたの?」
「星を見ていた」
「?……あ」
簪も空を見ると、そこには散りばめられた様に星が輝いていた。
「綺麗だね」
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