第二部 vs.にんげん!
第18話 いざすすめはめつへのびょうしん!
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ベッドの横、部屋を仕切る衝立。その向こうからは何も聞こえぬが、部屋の広さ的にもう一台ベッドがあってもおかしくなさそうだ。ティアラは答える。
「大丈夫です。今はご自身の回復に専念なさってください」
夢を見た。その晩、失くした記憶の最後の欠片をウェルドはとうとう手に入れる。
太陽の宝玉。
せっかくそれを手に入れたのに、浮かない顔で、酷く何かを心配しているようなノエルの顔。何かを深く考え込むディアスの態度。
その帰り道。来た時とは違う形の部屋。
そこにある、紫の剣。
ウェルドは叫んだ。叫んで起きた。何故入院させられているのかを、ようやく悟った。
それから一睡もせずに朝を迎えた。何か月寝込んでいたのか全く想像もつかない。ただ、冬、季節だけが真実だ。
その日最初に病室を開けたのは、ティアラではなかった。見知らぬ大男だった。赤くやけた肌を見て、、砂漠の民だとわかった。男は大股で歩いて来て、ベッドの横に立った。
「サドラーだ」
ウェルドはやつれた顔で大男を見上げた。
「オイゲンから聞いてるぜ。あんたもセフィータの人間だってな。ウェルドだっけ?」
頷く。
「まあ、同郷のよしみだ。これから仲良くしようぜ」
「……何しに来たんだ?」
「挨拶だ。これから仲良くせざるを得ん局面があると思うからな」
サドラーと名乗る男は、窓辺の低い棚に腰かけた。
「あんた達よりも何日か前に狂戦士化したのは俺だ」
頭の霧が少し晴れ、ウェルドは目を瞠る。
バルデスが一人を生け捕りにしたと、話には聞いていた。その間にクムランが、紫の剣を引き剥がす方法を見つけたと。
その一人がこの男なのだ。
「因果な話だが、俺は少しほっとしてる。矢面に立たされるのが俺一人じゃなくなったってな」
「……俺は」
縋るような目をしている事を、ウェルドは自覚したが、どうにもできなかった。
「俺は、あんたを酷い奴だと思ってた――血も涙もねえ殺人鬼だって――」
そいつは安全な所で眠りこけていやがるのか?
これだけの事をしておいて?
そいつのせいで一体どれだけの人が傷ついた?
あの時言った言葉が、今全て自分に跳ね返ってくる。
その男にとっても殺戮は不可抗力だった。
狂戦士化した者に責任をかぶせても、事態は何も変わらない。
あの時腹立たしかったディアスの言葉が、今は自分を救う。
何とも皮肉だった。
「こんな事なら――」
ウェルドはどうにか、感情を堪えて言った。
「最初に狂戦士化したのが俺だったらよかったよ――何も知らずに、あの町の惨劇を見ずに、狂戦士化していれば――」
「少しはマシな気分だったろうってか?」
その通りだ。順番が結果を変えないとしても。
狂戦士が町にもたらした破壊を目にした以上、それと同じ事を
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