第二部 vs.にんげん!
第18話 いざすすめはめつへのびょうしん!
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上がろうとして、体がぴくりとも動かぬ事に気付く。頭は霧がかかったようにぼんやりし、何も考えられなかった。ぼんやりと天井を見ている内に、誰かが部屋に入ってきた。
輝くような金髪の、白いローブの少女だった。目が合うと、少女は駆け寄って来てベッドの横に膝をつき、ウェルドの右手を両手で握りしめた。
「ウェルドさん」
誰だろう、この女は。新しい寮母か? にしては随分と若い。
それよりもウェルドは、視界に入った自分の腕の細さに愕然とした。
筋肉が萎えてしまっている。
「ウェルドさん、私が誰かわかりますか? 思い出せますか?」
わからない。と言おうとしたが、唇は動かず、喉は渇ききって声も出ない。
「ご自分の歳はわかりますか?」
どうにか囁く。十八歳。少女はよく耳を傾けて、それを聞き取った。
「ここがどこかわかりますか?」
大学の……寮……。
少女はウェルドの答えにひどくショックを受けた様子だった。泣きそうな顔で、実に痛ましい。
「私はティアラ。ここはカルス・バスティード。この町の入門記録によれば、あなたは十九歳です」
口から出まかせだ。
サリット教授からカルス・バスティード行きを勧められたのがどこからか洩れて、この子は俺をからかっているんだ。ウェルドはそう結論付けた。ここがカルス・バスティードなら、ここに来た道中の記憶が全くないのはおかしい。
ウェルドは思い出そうとした。思い出しそうになった。思い出したくもない、恐怖の記憶だった。頭が割れるように痛い。
気を失うように、深く眠りこんだ。
眠り続けた。途中、何度か意識が蘇り、誰かが口に水やスープを運ぶのを、または癒しの魔法がかけられるのを感じた。
何日かぶりにはっきりと目を覚ました時には、少女ティアラについて思い出していたし、彼女の話を真実であると認められた。
「思い出した」
ティアラの魔法のお陰だろう。萎えた体は日を追って回復していく。ウェルドは喋れるようになっていた。
「太陽の宝玉を取りに行ったんだ。ノエルと……ディアスと……」
「はい」
だが、その後が思い出せない。
「俺は……事故にでも遭ったのか?」
「そんな所です」
「そっか。何かデカいのが派手に暴れてたから、天井が崩れたりしたかな」
「……」
「ノエルとディアスは?」
ティアラは憔悴した顔で微笑む。
「生きてはいます」
「ここ、教会なのか?」
「ええ」
ふと思いついたことを尋ねた。
「併設の病院なら、なんで大部屋使わないんだ? ここ、個室だろ?」
「色々と事情があるのですが、あまりお気になさらないでください。ご不便はおかけしませんから」
ウェルドには、ティアラが何かを隠しているように見えた。部屋を見回す。
「この衝立の向こう、誰かいるのか?」
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