第六十五話
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内では切れる度にかけ直していたが、もうこれ以上使えばレコンのMPがとても保たない。幸いにもこの吊り橋には、モンスターは出ないようで、《ホロウ・ボディ》の持続時間が切れたまま、俺たちは吊り橋に足を踏み入れた。
「水中には巨大なボスがいるから、落ちないようにね」
他にモンスターがいない代わりに、水中には巨大なモンスターがいるらしい。ウンディーネなしの水中戦は嫌というほど味わったし、わざわざ水辺に近づきたくもない。
「だってよ、リズ。気をつけろよ」
「落ちないわよ!」
確かに、今俺たちが走り抜けようとしているこの吊り橋はガッシリとしていて、人間が三人乗って走っているにもかかわらず、びくともしない安定感を保っている。それが分かっていながらの俺の言葉に、リズはムッとしながら返答してきてくれる。……まあそれはともかくとして、吊り橋の安定感に感謝しつつ走り抜け――
「――止まれ!」
――ることは出来なかった。何か形容しがたい気配を感じた俺の言葉に、前を走っていたレコンと後ろにいたリズも止まる。一分一秒を争う事態で急いでいるにもかかわらず、歩みを止めた俺に対して怪訝な視線が向けられる。
「……どうしたの、ショウキ?」
「いや、何か……変な気配が、するんだ」
どこかで感じたことのあるようなこの気配。まとわりつくような、気を抜いたら気配に殺されそうな、そんな気配。リズとレコンにはその気配が分からないようだったが、俺の言葉を聞いて回りをキョロキョロと見渡し始めた。……しかし周りには何の姿もなく、レコンが仕方なく索敵用の魔法を唱える。
そしてレコンの索敵用闇魔法、プレイヤーに対するレーダーとなるその鏡には、一つの光点が示されていた……
「……本当にいた、そこの柱の陰!」
「Oh.バレちまったか」
レコンに隠れていた場所を看破されたにもかかわらず、隠れていたプレイヤーは何の気負いもなく気軽に姿を現した。……そしてその姿を見た時、俺は先程の気配の主を思いだしていた……無意識に忘れようとしていたにもかかわらず。
「相変わらずcowardだなぁ《銀の月》」
相変わらず《臆病者》――奴はそう言いながら俺を笑っていた。俺の記憶より体格は少し大きいが、身体全体を隠している死神のような印象を持たせるポンチョ姿。そこからのぞく手に無造作に持たれた、鎌の如く暗い光沢を纏う包丁。
「久々のreopenじゃないか、もっと喜べよ……なぁ?」
そこに亡霊のように佇んでいたのは、アインクラッド最強最悪の殺人ギルドのリーダー。
「PoHっ……!?」
激流の流れる音が響く吊り橋の上に、奴のふざけた声色の「Exactly」――その通りだ、という肯定の意を示す声が響きわたった。
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