第六十五話
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が、俺への言葉はそのまま続いていく。父がこれだけ話すのは、久しぶりかもしれない。
「たまには迷わず、ただ真っすぐに進んでみろ」
父の言葉がそう言って終わるとともに、俺のポケットに放り込んでいた携帯が、バイブ音でメールの受信を知らせる。父はもう言うことはないとばかりに立ち上がり、俺はその父の言葉を頭の中で反芻しながらも、とりあえず携帯を開いた。
送信者は今日アドレスを交換したばかりの、篠崎 里香――リズからだった。
内容は簡単にまとめると――『速く来て』。まだ決めてあった集合時間には余裕があるが、先に戻っていたレコンかリズに何かあったのだろうか。父の言葉を反芻するのもそのメールで忘れてしまい、慌てて食器を片付けながら立ち上がった。
「母さん、御馳走様!」
キッチンにいる母にそう伝えた後に居間から出て、ついさっきのように母屋から自分の部屋である離れへと急いで移動する。食事が終わったすぐに寝たくはないが、そんなことを言っている場合ではなく、隠してあるアミュスフィアを取り出した。
アミュスフィアを頭に装着しながら、先程まで向こうの世界にいた時のように布団に倒れ込むと、後はその言葉を言うだけで向こうの世界へと自分の意識は移動していく。随分用意にも手慣れてしまったものだと自嘲しながら、俺はその言葉を唱えた。
「リンク・スタート……!」
その言葉とともに現実世界の一条翔希の意識は、アルヴヘイムにいるシルフの妖精ことショウキへと移行していく。それと同時にその風妖精の身体とアルヴヘイムの世界が構築されていき、自分がショウキとしてアルヴヘイムの世界へと降り立つと、ALOへのログインが完成する。
「ふう……」
未だに慣れることはない、ログインの感覚に一息つきながら目を開ける。俺が前回ログアウトしたのは、レプラコーン領から世界樹へと向かうダンジョンの中間地点にある町であり、そこで一旦休憩という手筈になっていた。所詮はダンジョンの途中にある休憩所、というような様子の町であり、あまり発展もなく薄暗い場所だったが……休憩所としては充分なのだろう。何せ、安全にログアウトが出来るのだから。
「レコン、ショウキが来たわよ!」
リズもレコンも先に来ていたようで――『速く来て』とメールして来たのだから当たり前だが――ログインして来た俺を二人とも見つけたようだ。俺も二人の下へ走っていくと、メールのことを問いただした。
「どうしたんだ、リズ?」
「あたしもさっき来て、レコンに頼まれてあんたをメールで呼んだんだけど……」
この世界のことに一番詳しいのはもちろんレコンであり、俺を呼んだのは間接的にはやはりレコンだったようだ。最初に来たレコンが、何か急がざるを得ないことになったのに気づいた――と
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