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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十五話 〈帝国〉の逆襲
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ました」
 ――だが、間に合った――とは言えないだろう。
沸き上がる不安感を押さえ込みながら新城は光帯が薄らと見える空へと視線を向けた、空を駆ける飛龍の影が滲んで見えた。



同日 同刻 集成第三軍主戦場より北西方約二里 
独立混成第十四聯隊本部 聯隊長 馬堂豊久中佐


独立混成第十四聯隊は、再び戦闘に突入するかのような様相を呈していた。
第五○一大隊の発した警報に最も機敏に反応した部隊の一つであり、
「急げ!旅団本部に再度の伝達だ。
こっちの管轄の砲兵隊、及び後方支援隊は直ちに森林地帯に退避を開始しろ!
輜重大隊は玉薬の移動を重点!他の部隊は警戒配置に移行だ!」

 ――畜生!此処で龍兵が来るとしたら・・・・・・何かしらの反攻手段……予備隊か、いや、予備隊ならこちらの軍司令部直轄の戦闘導術隊が感知するはずだ、爆撃か?
 ――何故このタイミングなのだ?それこそ揚陸支援に投入すれば第一波の損耗を抑えることが出来た筈だ。

 豊久は自分が混乱しかけている事を理解し、意識を現実に引きづり戻すべく、呻いた。
「首席幕僚……状況を」

「聯隊砲兵大隊は退避行動へ移りました。戦闘導術兵は敵龍兵の監視を開始、半径二里以内に敵龍兵が侵入すれば警告を本部と周辺部隊に発するように命じております。」

「宜しい、宜しい。大変結構」
玉薬と砲だけは森に隠しておかなければ危険すぎる。
だが、これでは――

「聯隊長殿!敵飛龍接近!!北方約一里にまで接近しています!
こちらにまっすぐ向かっています!」
導術兵が報告した場所には覚えがある。
「砲兵旅団か!――確認するぞ!」
 望遠鏡を取り出して天幕の外から確認する。
そこには誰にも妨げられることなく、炸裂筒を砲兵に叩きつける飛龍達が映っていた。
後ろで息を呑む幕僚達の気配がした。
豊久の視界もぐらり、と揺れた。自身の予想が最悪の形で的中した。
 ――これでは攻勢どころではない、守勢の維持すら、畜生。



同日 午後第三刻半 集成第三軍司令部 
戦務主任参謀 荻名中佐

「・・・・・・被害状況は?」
 西津忠信軍司令官は腕を組みながら地図に書き込まえた情報を睨みつけている。
「展開していた擲射砲部隊の内、三割程が使用不能となっております。
さらに独立第三○二・第三二七擲射砲大隊の集積所にて火災が発生、
玉薬に引火したので被害が酷く龍州軍兵站部から応援を受けていますが戦闘続行は不可能です。他の諸部隊も復旧作業には約半日かかると思われます。補給計画の再構築を行いますが、敵予備隊に対処する為にも一時的に守勢に徹する必要があります。
我が第三軍の保有する予備隊の内、独立混成第十四聯隊・及び独立捜索剣虎兵第十一大隊を支援に送れば日没まで攻勢を維持で
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