第三部龍州戦役
第四十五話 〈帝国〉の逆襲
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の主攻正面部隊は後退を開始しているようです」
香川情報幕僚が応える。
「つまり、〈帝国〉陸軍の砲兵隊が出てくるか。態勢を整える前に一気に打ち崩せれば楽に済むだろうが――」
聯隊長は短銃を戻しながら口篭ったが皆その先は分っている。
同日 午後第一刻 近衛総軍主戦場より後方五里
近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊 大隊長 新城直衛少佐
「――このまま楽に済むとは思えない。だからこそ、君たちに飛んでもらう」
第五○一大隊長・新城直衛少佐は旧友の勝利に安堵しながらもこの戦争の行く末には未だ悲観的であった。
それは〈帝国〉がなぜ大陸最強の国家なのかを考えれば子供でも建てられる予想だ。第三軍の戦況と敵龍兵がどこに居るのかを確認する為に龍士を飛ばすのはある意味当然のことだろう。
「御命令とあらばどこへでも」
「深入りはしないでいい、友軍の上空で攻勢の進捗をみてくれれば十分だ。
その代り――」
新城は視線を向けた先には子供のようであり、同時に熟練兵独特の雰囲気を醸し出している。
「君には耳を澄ましてもらう――その、何といったか、波を拾う、だったかな?
もちろん、無理はして早々に疲れてしまっては困るが――頼むぞ、金森伍長」
「はい、大隊長殿」
北領を生き延びた若すぎる下士官は頷き、飛龍に足をかけた。
新城自身は複雑な気分であったが|戦闘導術士として一番、術力と技術が高い男が彼であった。
「総軍司令部は“待て”の一点張り、痺れを切らすお気持ちは分かりますよ。
第三軍の攻勢が順調であるからこそ、そろそろ何か向こうも手を打つに違いないですからな」
藤森も興味があるのか友軍上空を飛んでいる〈皇国〉龍兵を睨みつけている。
『導術兵を飛龍に乗せるとは、よく思いつかれましたね。この程度ならば〈大協約〉違反にはならないと我が一族の法家顧問に確認をとっています。私がお手伝いしましょうか?』
義理堅い観戦武官の声が大隊本部員達の脳裏に響く。
「――お心遣いは大変嬉しいですが貴殿は観戦武官として僕の部隊にいらっしゃるのです。
例えどんなに困ろうとも貴殿の――天龍族の力を知っていてもそれを頼るわけにはいきません。いずれ、別の立場で協力してくださるのならばこの世の何よりも頼りにさせて頂きます」
申し訳なさそうに頭を振る様子を見かねた藤森が「今回は貴方の翼竜が間に合った御蔭で――」と新城は言葉を切る。坂東の体がピクリ、と震わせたのである。
そして、それとほぼ同時に導術兵が立ち上がり、警報を発する。
「警報・警報北東ヨリ飛行集団ガ南方・集成第三軍上空ヘ接近セリ
繰リ返ス警報――」
導術士と幕僚達が動き回る中、新城は天龍に再び向き合う。
「坂東殿、貴殿の翼竜は価千金の働きをしてくれ
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