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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十五話 〈帝国〉の逆襲
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が拘置していた予備部隊が半壊しているのではシェヴェーリン閣下が独力で支えるのは最早困難でしょう」
 情報参謀が顔をしかめて報告する。
「捜索騎兵聯隊の再編にはどの程度かかる?」

「――先程、視察に出た際に確認したかぎりでは砲兵隊が一番手ひどくやられておりました。随行していた砲をほぼ完全に喪失し砲兵隊の指揮を子供の様な少尉が執っている有様です。騎兵戦力も三分の二が未帰還、随行した猟兵達もほぼ同様です。
隊本部も砲撃により壊滅的な被害を受け、指揮官であったベンニクセン大佐殿も行方不明となっており、現在は第二大隊長のフェルマー中佐が指揮権を継いでいます。
あれでは少なくとも明日の補充を受けるまでは戦闘力を喪失したと判断して間違いないでしょう」
 情報参謀が書面に目を通し報告する。
「それは――ずいぶんと酷くやられたな」
 ユーリアは眉を顰めた。偵察騎兵聯隊は精強であり、軍歴にこの部隊名が刻まれていただけで騎兵将校達は部隊の者から信頼を受けられる程だ。
<帝国>陸軍――とりわけ東方辺境領軍はその広大な大地で戦を行っていただけあり、伝統的に偵察を重視する。熟練した偵察騎兵は宝玉よりも貴重なものである、と彼らは考えていた。敗北しましたと聞いて、はいそうですかと済まされる事ではない。

「――はい、閣下。戦闘詳報はまだ提出されておりませんが、猛獣使いどもが、銃兵聯隊と共同して奇襲を仕掛けたそうです。騎馬が猛獣の咆哮により潰乱し、そのまま敵に主導権を握られたようですな、猛獣使いが大隊を一瞬で潰し、そのまま包囲される寸前で退却に抵抗したといったところです」
「また、猛獣使い――」
「はい、閣下。そして敵主力部隊が平射砲を中心とした部隊を抽出し、強襲をかけた事で砲兵隊が壊滅、追撃を受けながら潰走したようですな」
「敵の規模は?」

「ほぼ同数、蛮軍ですと旅団から大型聯隊規模といったところです」

「――あの男かしら?」

「かもしれませんな。砲兵と猛獣使いといえば彼を思い出させます。なるほど、やはり首を刎ねた方が良かったかもしれませんな」と笑みを浮かべてメレンティンが言う。

「少なくともシュヴェーリンにとってはね、戦後処理で優遇してあげないと
――それにしてもあいかわらず厭なところをついてくるわね、彼」

「戦争とはそうした物です、確かに騎兵一個聯隊が使えなくなったことは手痛いですが、全体の趨勢には精々一石を投じた程度です」
メレンティンは嗜めるように、落ち着いた口調でユーリアに話しかける。無論、けして看過できないものではあるが、師団長が対応すべき事柄である、自身たちはそうした戦闘を包括した全体の趨勢を見極めねばならない。
「確かに猛獣使いが他部隊と連携をとるようになったのは厄介です、厄介ですがそれだけです。木を見るの
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