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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十五話 〈帝国〉の逆襲
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の頭だろうと己に幸運を齎すと理屈付けができれば、崇めるものだ。

「宮様肝煎りの鉄虎大隊ですか……あの部隊ならば正面から〈帝国〉陸軍と渡り合えると?」
 葛原が興味深そうに云ったが益満は首を横に振る。
「正面からではない、あれの運用法は騎兵と同じだ。無論、直線で突撃するものではないさ。
だが馬鹿正直に正面から銃兵と戦うものではない、その大原則は騎兵と同じさ、正面からの強襲は銃兵の餌だ――馬堂中佐からの受け売りだがね」

「同じ駒州の方でしたな、御知り合いでしたか?」
「あぁ、ガキの頃から面倒を見ていたよ、もう前線仕事じゃ比較にならんがな」
 鼻を鳴らす。
「まぁなんにせよ、だ。あの部隊はまだ使えるものではないだろう。
今の手持ちだけで膠着状態を打破せねばならん」

「ならば――だ。参謀長、どうするつもりだ?」
 神沢の問いかけに益満大佐は苦い顔をして答える。
「砲兵の支援を強めるしかありますまい、現状ですと、我々は第一旅団の兵力を誘引しつづけるのが最低限の目標となります。後は――状況次第ですが、夜間に五○一大隊を使う手もありますな、訓練不足は否めませんが、それでも剣虎兵です、それも北領を生き抜いた生え抜きの剣虎兵将校が率いている。敵の防衛線を削るには丁度いいでしょう」



同日 午前第十二刻半 龍口湾海岸堡 東方辺境軍司令部
軍参謀長 クラウス・フォン・メレンティン准将


「シュヴェーリン少将は手酷くやられておりますね。――見事なまでに調整された攻撃ですな」
 敵逆襲部隊の正面に立たされた第21師団第二旅団は踏み止まる事にこそ成功したが、劣勢を覆すには数が違いすぎ、さらに敵の無駄が少ない攻撃に付け入る隙がなかった。
「存外にやるわね。これが連中の本気と云うことか?ノルタバーンで戦った時には呆れるほどの弱兵ぶりだったのだけれど――例の背天ノ技を用いる故か?」
 ユーリアも素直に褒め称える程に第三軍の攻勢は見事なものであった。
「はい、殿下。まず間違いなく、それに逆襲部隊が敵の予備戦力にしてやられた事も大きいですな。おかげで師団の保有する予備戦力が枯渇してしまいました。情報のやりとりだけならば神を知らぬ蛮族共が用いる術は優位を齎すと云うことでしょう。いやはや、ノルタバーンの時も今回も、シェヴェーリン殿は引きが悪いですな」
 メレンティンはそういうと、僅かにほほ笑んだ。
 ――といっても勿論、彼にはそれを跳ね除けるだけの能力もある。あぁもちろん我々がしかるべき支援を行えばの話だが。
「確かに厄介だが、だがそれだけだ。当面の問題はこの南部だけだ、他はなにも問題はない。抵抗こそ強固だがそれを下す術を我らは幾通りも持っている」
 参謀達も彼らの愛する美姫の言葉に不敵に笑い頷く。
「はい、殿下。ですが師団
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