高校2年
第三十三話 えげつない
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気はプンプンと漂ってきていた。
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<1番ピッチャー三田君>
一回の裏、商学館打線の先頭打者は今日先発の三田。背番号は“6”で、本来は1番ショートの選手である。浦田と同じように手足が長い体型で、打席に入る前のバットを回す仕草からハンドリングの柔らかさが存分に伺えた。
(いかにもセンスがありそうな奴だよなぁ。)
その挙動をマスク越しに見ながら、宮園は今日の先発・越戸をリードする。越戸はリリーフで好投を見せていたが、昨日の準決勝で美濃部が136球を投げて完投した為、今日は先発のマウンドを任される事になった。それに緊張する事もなく、いつも通りのどんよりとした顔をしている。
バシッ!
「ストライク!」
ひょろっとした体を折り曲げて独特のリズムで投げ込む変則投法。初球を見逃した三田はおぉーと露骨に驚いた顔をする。
(何これぇ?投げ方ぐっちゃぐちゃやんけぇ。タイミング取りづらかね〜)
2球目もストライク。
高校生の変則投法というのは、往々にしてコントロールも悪く、球が遅いから投げ方を変えたのについでにコントロールも悪くなったというのが多いのだが、越戸はギッコンバッタンしたこのフォームでストライクがとれる。
コキッ!
(くそっ!上げてもーた!)
三田は3球目、外に一球外したボール球に手を出した。しかし、タイミングを完全にズラされ泳ぎながらも、長い腕がしなやかにボールに向かって伸びていき、手首が最後まで返らなかった。
ポトッ
フラフラと一塁の後方に上がったフライは、ファースト安曇野の頭上を超えて芝生に弾んだ。まるで駄目な力の無い打球だが、三田は結局一塁に生きる。
(まぁヒットはヒットやけ、ええか)
三田は苦笑い。ボール球を打ってしまったのは失敗だが、センスでヒットにした。
<2番セカンド楓山君>
2番打者は1年生の楓山。小柄細身の右打者で、前日の準決勝では3安打を放っている。
コツン!
しかしこの場面はキッチリと送りバント。
初球からキッチリと転がして、一死二塁を作りにいった。
(商学館は足を全然使ってこないんだよな。基本に忠実にバントでランナー進めて、バントしない時は打たせるだけ。ここでも初球から送ってきた。)
捕手の宮園が商学館ベンチの丸子監督を見る。
丸子監督は丸子監督で、相変わらずしれっとした顔で戦況を見つめている。
(別に難しい事なんてする必要ないもんな〜。だって次のバッターはこいつだし〜。)
丸子監督はベンチにドカッと座ったままで、もう“観戦”モードである。そして打席に入るこの男も、最初から全くベンチを見る気がない。
<3番キャッチャー梶井君>
無表情。冷たいまでの
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