決戦の後に
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になればなるほど、糞食らえな仕事だ」
アレスにそう語りながらも、結局は自分自身も効率か非効率で話を進めている。
苦いものを吐きだすように、クラナフは顔をしかめる。
自らの命を、部下の命だけを考えるだけならば、どれだけ楽な仕事であろう。
そんなクラナフの視線に、アレスが気付いたようにこちらを見た。
まだ若い。
だが、これから先に彼が通る道は自分などよりもきっと茨の道が待っている。
だから、そう思い、クラナフは足を一歩進めた。
+ + +
「休まないのか」
「ええ。まだ残っている仕事がありますから」
「収容か」
クラナフの言葉に、アレスは首を縦に振った。
人から物へと変化した者たちの扱いは酷い。
吹雪に晒された武器は壊れるが、死体へと変化した人は壊れようがないからだ。
順次、物資を基地へと運びいれて、最後は死体となる。
暖かくするわけにもいかず、寒風の吹き荒れる外へ積まれ、帰還すべき船を待つ。
「……今は私達二人しかいない」
そのまま死体の搬送へと移ろうとしたアレスに、クラナフの言葉がかかった。
一瞬動きを止めて、しかし、小さく苦笑して動き出す。
その動きを、クラナフは理解した。
彼が吐きだそうとしたのは、まったく意味のない無駄な愚痴だ。
それを言ったところで、どうすることも出来ない。
ただただ自己満足だけの言葉。
だが、それをクラナフは聞きたかった。
「たいしたことではありません」
「それを聞きたい」
呟かれたクラナフの言葉に、アレスは一瞬眉をあげる。
そして、前を見る。
「大佐は――効率、非効率で、そこにいる人を見ていないとおっしゃいました」
「ああ。そう言った」
「そのために、カッセルは死にました」
それは小さな言葉で、そして、クラナフの心を突き刺す刃となる。
「効率か非効率か――確かにそう思いましたが、それで死ぬのは私の部下です」
「だが。それで生き延びた者もいる」
「ええ――ですが、だからと言って、カッセルが死んで良かったわけでもない」
愚痴ですねと呟いた言葉に、クラナフは心を締め付けられる。
本人自身も、それを理解している。
いや、それ以上に――おそらくは、クラナフが考えたことまでも。
そのためにカッセルが死んで良かったわけでもない。
かといって、クラナフを攻めるわけでもない。
ただの愚痴だと呟いた言葉に、クラナフは唇を噛んだ。
「これはスレイヤー少将から聞いた言葉だ」
アレスが顔をあげる。
「……君ら兵士がこうだった、ああすればと考える必要はない。それに悩むのは、我々指揮官の仕事だと。ただ、君たちは――君たち兵士は過去を考えるよりも、未来を考えろと」
「未来です
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