決戦の後に
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ダー大佐の独断であった……ミューゼル少尉は反対するも、意見具申に腹を立てたヘルダー大佐によって敵陣後方へ単独任務を命令される。
大まかな筋書きを打ち込んで、マーテルは手を止めた。
多少の誇張はあるものの、上は疑いもしないだろう。
ため息混じりに、窓の外を見た。
先ほどまでの晴天が嘘のように――ずいぶんと荒れていた。
+ + +
戦士たちが戻っていく。
爆撃機が母艦に戻ると同時に、再びカプチェランカは雪に包まれた。
厚い雲に覆われて、風がさらに強くなる前に、最低限の装備を持った兵士達は基地へと逃げ込む。
後片付けを考えるだけで気が重くなる。
勝つには勝った。
しかし、とても喜べそうにない。
自陣の損害が敵よりも少なかったからといって、ゼロだったわけではない。
助かった兵士達が、毛布に包まれた遺体を運んでいる。
それを見送れば、何回見ても慣れぬ光景だと思う。
助けられなかったかと。
息を吐けば、動かぬ人影を同盟軍司令官――クラナフは見送った。
それは今まで幾度となくたどってきた光景。
悔しくて、犠牲を減らしたいと思った。
クラナフは選択した。
逃げるのではなく、戦うと言う事を。
その成果は、敵基地の攻撃地点から徒歩で帰還途中に発見された兵がいた。
凍死寸前だったものもいた。
そんな彼らは、当初のアレス・マクワイルドの意見を取り入れれば決して助からなかった兵士。
だが。
それと同時に基地に残った多くの兵が倒れ、傷ついた。
どちらの策が多くの兵を助けられたのだろうか。
効率か非効率か。
そう言ってアレスを非難した言葉。
彼にとっては逃げた方が犠牲は少ないと考えたのだろう。
そうかもしれない。
白く息を吐きながら、クラナフは周囲を見渡した。
犠牲は大きい。
「だが、まだ若い」
もし見捨てる事を選択していれば、この基地に帰還して来る兵士達は例え生き残ったところで、上への――国への反感を持ったことだろう。
そして、この基地から逃げのびた兵士達も、逃げる事を覚えてしまう。
彼らは戦った。
帰還する兵士達は、上は彼らを見捨てないと信用し、そして、基地の兵士達は数を減らしたとしても、一人一人が戦争を経験し、そして。
見渡した視線の先には、疲れているだろうに、撤収を手伝う一人の英雄を見る。
敵の攻撃を一手に引き受けながら耐えきり、さらには返す刀で敵の司令官を補殺した英雄を。
――軍には英雄が必要だ。
そう言ったのは誰であったか。
クラナフ自身も、ここまでを求めていたわけではない。
ただ効率か非効率か。それ以上の数字も見ていただけだ。
犠牲すらも数字とする。
「上
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