第七話 三人目その九
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「奈良市にも大きな教会一杯あるし郡山にも桜井にもあるのよ」
「多いんだな、天理教の教会」
「うちの近くにはなかったけれどね」
裕香はこのことは残念な顔で言った。
「あんまりにも辺鄙なところで隠れ里みたいな場所だから」
「本当に凄い場所なんだな、裕香ちゃんの実家」
「秘境よ」
まさにその域に達しているというのだ。
「お猿さんも猪も熊も鹿も出て」
「狼出ねえよな」
「ニホンオオカミは絶滅してるから。けれど」
「けれど?」
「噂はあるわ、まだ出るってね」
その絶滅した筈のニホンオオカミが、というのだ。
「奈良県と和歌山県の境に」
「まだいるのかよ」
「そういう噂もあるのよ」
未確認だが、というのだ。実際に絶滅認定された動物が生き残っていたという事例はままにしてある。その噂もだ。
「実際にね」
「凄いな、そりゃまた」
「そんな場所だからね」
それでだというのだ、今度は。
「もう神社仏閣目当てで来る人の観光とかも」
「縁がなかったのね」
「奈良県の南は凄いから」
辺鄙な意味で、という言葉だ。
「北の方なの、栄えているのは」
「南はまだまだなのね」
「まだまだどころか過疎も進んでいて」
神戸で生まれ育っている菖蒲への言葉だ。
「帰ることも難しいのよ」
「兵庫県にもそうした場所があるわ」
「山の方よね」
「そう、そうした場所はね」
「兵庫県っていっても色々なのね」
「ええ。神戸は確かに人が多いけれどね」
そうでない場所もあるというのだ。
「山はやっぱり住みにくいところがあるわ」
「そうよね、だから私ずっと神戸か大阪にいたいから」
少なくとも実家には戻りたくはないというのだ。
「戻るだけでも一苦労だし」
「裕香ちゃんの実家の話は何度聞いても凄いな」
薊も唸る様にして言った。
「奈良県も色々だな」
「そうよ、あと妖怪もいるから」
「妖怪?」
「マスコットね。あれはねえ」
困った顔での言葉であった、これ以上はないまでの。
「何であんなの選んだかしらってね」
「ああ、あれな」
「あのマスコットね」
「全然可愛くないどころか」
それどころか、というのだ。
「夜いきなり前に出て来たら卒倒するわよ」
「何であんなに可愛くないんだよ、あれ」
「他のゆるキャラと比べたら全然違うわ」
「気持ち悪いっていうかな」
「悪い意味でインパクトが強過ぎるわ」
「知事さんが選んだのよ」
困った顔のままで言う裕香だった。
「どういうセンスしてるのか不思議でならないわ」
「しかも一家だよな、あのマスコット」
「他にもいるわね」
「そうなの、調子に乗って増やしたのよ」
明らかに迷惑だ、という気持ちが中にある言葉だった、裕香の今の言葉は。
「妖怪退治の漫
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