暁 〜小説投稿サイト〜
戦争を知る世代
第十九話 長雨
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
てないか?」
お茶を啜る。イナリも、この話題を避けているのは、何となく態度から見える。

「・・・・やっぱり、そう、見えるよね。」
イナリは、小さく答えた。その視線は、手に持っている器に落としている。

「なんか・・・あったのか?」
もう一度、お茶を啜る。

「いや、直接に、何かあった訳じゃないんだ。ただ・・・。」
言い淀んだ。しかし、まるで何かを飲み込むように、そこでお茶を啜った。

「ただ・・?」

「・・・・」
その続きを促しても、イナリは話そうとしない。ただ、お茶が入っている器に、視線を注ぎ込んでいた。そこで、俺ももう一度、お茶を啜った。しかし、もうお茶は入っていなかった。

「イナリ・・・」

「ん?」

「もう一杯、お茶をいれてくれるか?」
その問いに、「分かった。」と答えて、また台所に入っていった。

 ここ最近。いや、具体的には一週間前の盗賊団討伐任務から、ハナの様子はおかしかった。妙によそよそしいし、いつも見てる方がいらっとくるほど、イナリと話していると言うのに、その日からほとんど話さなくなった。個人的には、ちょっと嬉しかったけど、そんなのは2日目くらいまで。彼らの態度は異様だった。単なるケンカとか、すれ違いとかそんなのじゃない。決定的な溝が、お互いに出来たような感じだったのだ。

「お待たせ。」
イナリはそう言って、新しく煎れたお茶を持ってきてくれた。俺はそのお茶を受け取りつつ、もう一度話を促す。

「ありがと。・・でさ、イナリ。さっきの事だけど・・・何か、話せないのか?」

「話せないこともないよ。ただ・・・ただ、それが関係あるのかどうか、分かんないってだけ。」
縁側に座りつつ、神妙な顔付きを見せた。それでも構わない、って伝えると、イナリはその事について話してくれた。
 イナリの話によると、盗賊団討伐任務の朝、と言うよりも夜中に、異様な事が起こったらしい。夜中に、息苦しさとまとわりつくような暑さで目を覚ましたイナリは、自分の能力が反応している事に気が付いた。それは、木ノ葉隠れの里北西の森、菜野一族が管理する一帯で、これ程までに感じた事のない“悪意”“敵意”を感じたらしい。その強さは、イナリの頭を割るような傷みが襲い、意識すら朦朧とさせるほどだった。ハナに何かあったのかもしれない、そう思って出掛けようとした時に、割れるような頭痛で、意識を失ったと。そして、そのまま朝まで目を覚まさず、いざ目を覚ますと、集合時間を過ぎていた。それで、とりあえず、急いで集合場所に着たらハナは、何事もなくいた。ただ、その態度は既に、よそよそしいしかったと、言うことらしい。
 この話だと、直接的にハナに関して分かることはない。しかし、イナリの能力が反応している事を考えると、ハナの“周り”に何かし
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ