キミノ声…
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地を握り締め、シミ一つ無いそれに跡を作った。
それは今となっては解らないがもしかしたら、そうすることで確かめたかったのかもしれない。
自分がここにいて良いのか、彼は僕を受け入れてくれるのか、と……。
日に日に夏の色を濃くして行く七月中旬、それまで学園中を占めていた殺人犯の話題は舞台となった白梅学院大学高等部が期末テスト期間になるのと同時に下火になっていた。
浮きだっていた青春真っ只中の生徒たちはまだ物足りない様子だがいざ席に着けばさすがに目の色を変え、その分教科書とノートを睨みつけている。
「……お前マジで受ける気?」
オッスと、教室に入ってきた彼がその姿を見つけるなり開口一番に飛び出したのは心配と言うより呆れに近いため息だった。
あれから約一ヶ月、未成年のためメディアには『白梅学院大学高等部教諭男子生徒(16)を殺人未遂』としか取り上げられなかった。
だが、記者たちはそれだけでは満足できず、日中から三十度を軽く越えると予報では言っていたにも拘らず今朝も正門に十人以上張り込んでいる。
こちらが冷暖房完備の教室でテストを受けている頃、彼らは炎天下の中より新鮮で刺激の強い情報を求めて走り回るのかと思えば筋違いにも些か不憫を覚える。
被害と言っても青野に首を絞められただけなのだから当然翌日にでも登校するつもりでいたが、念のため運ばれた先の病院に駆けつけてきた家族の猛反対に合い、期末テスト一週間前までたっぷり休養を取る羽目になってしまい……おかげで英語以外の小テストをほとんど受けられず守備は桜井よりも厳しい。
「ちょっと待てコラ!」
「何だよ」
「何だよじゃねぇ!今ぜってぇ俺に失礼なことを思っただろ!!」
何故分ったのだろう、そもそも口に出してはいない。
挨拶代わりにこちらにドスドスと今にも地響きを轟かせそうな足取りで歩いてくる親友をじっと見る。
どうやら怒っているらしい。
思いなしか額に青筋が浮き上がっているようにも見える。
テストを前にして何とも面倒臭い奴だ。
「テっ!」
手挟む教科書の角で脳天を叩かれ、軽く煙が見える。
「うるせっ、東雲の考えていることは俺には筒抜けだっ!!」
「…なら、期末なんか僕に頼らなくても余裕だろ」
「それは無理だ」
「何でだよ?」
そこで太一は意味深な間を置き、口の端を吊り上げて笑う。
どうすればあんなに器用な表情ができるのだろうと、毎度疑問に思っている彼には言うまでも無くできない。
叩かれた箇所を左手で摩る。
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