第25局
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はためらいがあったのだが、調子に乗っていた今、そんなためらいは消えていた。
「なあ、塔矢、この前の対局は残念だったな」
「え。あ、ああ。奥村君だっけ?君も見ていたのか」
「そりゃそうさ、オレは囲碁部だからな。噂の塔矢がどれだけ強いのかと思ってたんだけど、あんなあっさり負けるなんてな」
「…そうだね。見事にやられてしまったよ」
「あれって、進藤のまぐれ勝ちだったりスンの?」
「いや、あれが実力さ。今のボクじゃ、進藤にはかなわない」
「なーんだ。塔矢って、そこまで強いわけじゃなかったんだ」
「……」
進藤の実力を思い知らされているアキラは、何も言い返せなかった。何しろ進藤の力は父である名人塔矢行洋に匹敵するのだ。そんな進藤と比べられては、自分が強いなどどう頑張っても言えるわけがなかった。
しかし、そんなアキラの様子を見て、奥村の誤解はますます深まった。
−なんだ、何にも言い返してこない。やっぱり、塔矢ってそんなたいした奴じゃなかったのか。ま、そりゃそうか。普通なら強けりゃ大会に出て、優勝しまくってるもんな。
そんな奥村の話が囲碁部員達に伝えられて、アキラに対する蔑みは、ますます強まっていった。
そして、とうとうヒカル達の元にまで、アキラの噂が届くこととなった。
「え!?なにそれ、何でそんな話になってるの?」
放課後の教室に、あかりの声が響いた。
「え、だって、囲碁部の奴が言ってたぜ。噂の塔矢アキラなんて実はたいしたことない。その証拠に、囲碁部でもない進藤にあっさり負けたって。進藤、お前塔矢に勝ったんだろ?」
「…ああ」
「ほら、囲碁部に入ってない進藤にあっさり負けるんだ。たいしたことねーじゃん?大会に出てるわけでもないんだろ」
「そんな、だって、ヒカルは!」
あかりにとってはまったくとんでもない話だった。
−ヒカルに負けたから塔矢君がたいしたことないだなんて!?いったいなんでそんな噂になってるの。あの日、みんなの前で打ったのに!
あの対局を見てそんな噂が流れるというのが、あかりにとってはありえなかった。あれだけの碁を見せられて、どうしてそんなことが言えると言うのだろうか。あかりにはまったく理解できなかった。
あかりは今まで、極端に棋力の低い相手との対局は、ネット碁くらいしかなかった。だから、棋力が低い相手との会話などほとんど経験がなく、棋力の差によって生じる、碁の内容の理解の差といったものが全く分かっていなかった。
しかし、ヒカルと佐為は違った。今までの経験から、先日の碁は、レベルが低い人たちには内容を把握するのが難しかったであろうことも理解できていた。
もっとも、だからといって、この噂に納得がいくかという
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