第23局
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そのままお互いに応手を交わし、盤面が少し進んだところで、緒方は、行洋の手に納得した。
−なるほど。進藤は望み通りの展開だったはず。だが、黒がボウシからジワジワと攻めることで、気がつけば形勢は、黒に悪くないものになっている、か。さすが、名人。
アキラもまた、自分が読めなかった進行に驚いていた。
−こんな、こんな流れになるなんて、想像もつかなかった…。進藤が優位に事を運んでいるみたいだったのに、いざここまできてみると…。はじめに進藤が仕掛けた一手。あの石がいつの間にかボヤけて、働きを失っている!?
−子供ながらにここまで打つ。なるほど、アキラでは勝てないはずだ。だが、これが私の碁だ。名人、塔矢行洋の。こうして対峙した以上、容赦はせん。
二人の対局は続く。流れは黒の行洋が握ったままだ。
−しかし、進藤ヒカルがここまで打つとは…。
緒方は、名人と堂々と戦うヒカルの力に驚愕していた。
−アキラ君に見せてもらったあの一局で、力があるのはわかっていたつもりだった。プロに匹敵する力はあると思っていたが、まさかここまでのものとは。
−黒良しとはいえ、形勢は猛烈に細かい。明らかに名人は、手厚く打つだけでは進藤に勝てないと踏んでいる。白地を上から消し、冷静に判断の上、確実に地を取っている。
そして、アキラもまた、己の父と堂々渡り合う、ヒカルの力に瞠目していた。
−進藤は、読みも計算もずば抜けている。相手の手の内を全部読んだ上で、碁を自分のものにする手を必ず編み出してくる。お父さんにリードを許したまま、何もせずに終わるとは思えない。
そして、大ヨセも終わりが見えてきたとき、ヒカルの白石が中央の黒を割って入った。
その一手に、行洋の背中を冷や汗が伝う。読んでいなかった手だった。
緒方もまた、その一手に痺れていた。
−…いい手だ。この白は取れない。中につきそうな黒地が消えた。ただでさえ細かかったのに、これで逆に黒が薄くなった…。まさに気合の踏み込み。打たれてみると、ここしかないという、絶対の一手にみえる。俺もまったく気がつかなかった…。
−お父さんの手、どれも悪手とは思えないけど、形勢はとうとう逆転…。進藤、君は…。
最後の小ヨセを残し、行洋は投了した。
こうして、前の世界の”sai VS toya koyo”の碁が、この世界でも再現された。
”進藤ヒカル 対 塔矢行洋”の碁として。
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