第23局
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−ええ。以前のヒカルはこの碁を見ることで深く感じたものがあったと言っていましたね。以前のヒカルは、私とこの者のこの碁を見たことで、きっと成長したのでしょう。それはヒカルにとって必要な碁だったのです。それと同様、今のこの者にとっても、きっと必要な碁なのです。神の一手に近づくために。この碁を打つことが。そして、この碁を見るものにとっても同様なのです。
−打つことが必要…。
−ヒカル、今のあなたであれば、この碁を打てるだけの力があります。この碁を打ったときの私と、対等の力があります。今のあなたなら、この碁を背負っていけます。
−……
−それに、ヒカル。今の私であれば、この者が同じ受け答えをするのであれば、あのときの碁にはなりませんよ。もっと早く倒せます。そうなると、あのときの碁は、今のこの世には出てこなくなります。…だから、今この碁を打てるのは、あなたしかいないのですよ、ヒカル。
ヒカルは、眼を閉じた。そして、佐為の言葉に決心した。
−分かったよ、佐為。以前のオレには、当時のお前の碁を背負いきるだけ力はなかった。でも、今のオレなら。今のオレなら、あのときのお前の碁を背負えるんだな。いや、背負わなくちゃいけないんだな。オレの碁の中にも、お前はいるんだから…。
ヒカルは眼を開くと、次の手を力強く打ち付けた。
−これが進藤ヒカルか…。
ヒカルに対峙する塔矢行洋は、現在4つのタイトルを抱える、まさにプロの中の頂点にいるといっていい存在だ。世界中の碁打ち達が目指す、トップの一角であった。
その彼は今、目の前の少年を冷静に観察していた。
−まだ序盤とはいえ、石の流れにゆがみはなく、非の打ち所がない。プロのお手本のようだ。
確かに、ただのアマチュアではないと、行洋は実感した。
−それだけではない…。なぜだろう?この子はアキラと同じ年。中学になったばかりの子供。…なのに。
−先ほどの長考が終わってからの、この空気は…、なんだ?この威圧感は…。
アキラと緒方も、ヒカルの雰囲気の変化に気がついていた。
−進藤の雰囲気が変わったっ!…なんだ、この感じはっ!
−…おいおい、何だこの空気は。これじゃまるでプロの…、それもまさにトップ同士のタイトル戦じゃないか。これだけの気迫を、この少年が?進藤、いったいこいつは…。
序盤の終わりに、ヒカルの白が軽く仕掛け、中盤戦が始まった。
何手か進んだ後の、白ヒカルのスソガカリ。行洋の手が止まる。
−彼の思惑は見て取れる。ならば…。
しばらく考えた末の黒、行洋の応手に、アキラは驚く。
−これは…、白の、進藤の望む展開では?お父さんが長考の末、出した答えがこれ!?
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