第六十七話 秋の味覚その十二
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「ちょっと」
「限界?」
「近い?」
「ううん、あと十杯で八十だけれど」
それが、と顔に書いてあった。
「どうやらね」
「じゃあ止めるか?」
「いや、あとちょっとね」
「ちょっとなの」
「そう、ちょっとね」
こう言うのだった。
「あともう少し入るから」
「それでなの」
「そう、ちょっとね」
あと少しだけだというのだ、景子は勝ち負けは関係ないことがわかっていても別の感情で判断をしたのである。
「お腹一杯にまではね」
「頑張るんだな」
「そう、多分八十杯で限界になるわ」
自分のペースからだ、景子は美優に答える。
「それで止めるわ」
「そうか、あたしもさ」
「美優ちゃんもなの」
「このペースでいくと」
食べつつ言う、美優も食べればすぐに椀に蕎麦が来る。まさにわんこそばである。
「九十かな」
「美優ちゃんはそれ位なの」
「ああ、多分だけれどさ」
それで限界だというのだ。
「そうなるよ」
「そうなのね」
「ああ、百は無理だな」
それはというのだ。
「もっとな」
「そうなのね」
「そう、それじゃあ」
こう話す、そして。
景子は八十杯を食べた、そこで椀を置いて言った。
「もうこれでね」
「私も」
「私もこれで」
景子に続いて里香と彩夏もだった、椀を置いた。
そして琴乃だ、八十杯を少し過ぎた辺りで椀を置いたのだった。
「私もこれでね」
「あたしはっもうちょっとだな」
美優は八十杯を過ぎている、だが。
勢いは最早最初の頃とは全く違っていた、それで。
何とか九十杯までいった、しかし。
ここで美優も椀を置いた、それでこう言った。
「もうこれでな」
「プラネッツ全員終了ね」
「これでね」
「ああ、皆何とか八十杯いけたな」
美優は全員が目標を達成出来たことには喜んだ。勝ち負けは別で目標に達成出来なくてもそれでもだった。
ここでだ、こう言うのだった。
「よかったよ」
「ええ、もう満腹」
「お腹一杯」
「我が生涯に一片の悔いなしってね」
「そんな気分よ」
「だよな、いやあ食った食った」
これで楊枝で歯の間の食べカスを取れば完璧に親父だ、美優はその親父臭い口調で笑顔でこう言うのだった。
「晩御飯大丈夫かね」
「そうね、それはね」
「ちょっとね」
五人共食べて終わってから言うのだった。
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