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万華鏡
第六十七話 秋の味覚その三

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「百杯はな」
「難しいわよね」
「だってさ、一杯一杯は少なくてもさ」
 それでもだというのだ。
「それが百杯になるとな」
「難しいのね」
「薬味があってもな」
 わんこそばには薬味もつく、これは外せない。そばを美味く食べる為にはやはり薬味があってこそなのも確かだ。
「百杯はな」
「難しいのね」
「それこそ朝から何も食わなくてさ」
 それに加えてだった。
「死ぬ程走って」
「それでなのね」
「思いきり勢いよく飛ばしてどうかなってな」
「それでもいけるかどうかわからないのね」
「百杯だぜ」
 大台だからだとだ、美優は真剣な顔で語る。
「相当なものだからな」
「ううん、じゃあ」
「ああ、女の子で百杯は難しいよ」
「男の子でもなのね」
「大柄な奴が身体動かしてな」
 それでようやくというのだ。
「食えないだろうな」
「じゃあ彩夏ちゃんも」
「ううん、おそば系は大好きで」
 彩夏も先程までの自信は消えてこう言うのだった、やや気弱になった顔で。
「幾らでも食べられるけれど」
「百杯は」
「目指すけれど」
 それでもだというのだ。
「難しいかしら」
「そうなるのね」
「うん、言われてみると」
 それで考えてみるとだというのだ、客観的に。
「難しいかしら」
「百杯はね」
 どうしてもだとだ、景子も言ってきた。
「相当難しいわよ」
「大台は」
「あの阪神だって百敗いかなかったのよ」
「それ字違うわよ」
「そうだけれどね。とにかく百はね」
 その大台に達することはというのだ。
「難しいわよ」
「そうよね。覚悟を決めないと」
「そうそう、そのわんこそば大会だけれど」
「何?」
「相撲部とかプロレス研究会は参加していいの?」
「それはどうだったかしら」
 相撲部等の参加は認められているかどうか、彩夏はこのことまでは確かめていなくてそれで微妙な顔になって言うのだった。
「ちょっとね」
「知らないのね」
「そうなの、けれど相撲部やプロレス研究会だと何かあるの?」
「食べるから」
「だからなの」
「そう、力士は食べるのが仕事でしょ」
 このことを言う景子だった、やはり同業者に近い相手だからこのことはよく知っていた。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、こういう大食い大会は力士やレスラーは参加出来ないことが多いの」
「そうなのね」
「ああいう人達はまた違うから」
 別格だというのだ。
「普通の人とは食べる量が違うから」
「参加お断りの場合もあるの」
「そうなの。うちの大学がどうかは知らないけれど」
「あの人達なら百杯はおろか」
 それどころかだというのだ。
「二百はいるかもね」
「二百ね」
 大台も大台、ダブルであった。
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