彼女は雛に非ず
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と手を繋いで進んで行ってください桃香様……いえ……“劉備さん”」
「雛里っ!」
瞬間、愛紗が怒気を張り上げた。しかし……桃香に手で制される。
雛里が深く言わずに示した事は真名の返還。一度預け合った真名を返還することなど、どれほどの侮辱行為であるのか分からぬはずもない。それほどまでに彼女は桃香を憎んでしまったということ。そして此処で斬られるかどうかの最終線を強引に確認して、敵であるかどうかを明確に認識し合う為に行った。最後に、これからの秋斗の為を考えて己が身を捨ててみせたのだ。
この大陸に生きる誰しもが衝撃を受けるであろう雛里の侮辱行為に眉一つ顰めなかったのは華琳。雛里の狙いと、その心中を察してであった。誇り無きモノの侮辱……では無く、誇り持つモノの敵対示唆だと判断して。
桃香の顔は蒼白に色が抜け落ちていた。慄く唇からは屈辱の吐息。されども……全てを抑え込んで雛里に目を向ける。
「“鳳統ちゃん”私の理想は否定させないよ。私は曹操さんが間違ってると思う。誰かの幸せを願う優しい人だから一緒に協力すれば多くの人を助けられるのに……今を生きたいって願ってる人を一人でも多く助けようとしないなんておかしいよ。一人ずつが世界を良くしようって動けばそれだけで平和が作れるから……足元の人を助けられないなら世界は何時までも平和にならないと思う」
ギリと歯を噛みしめて、雛里は桃香を睨んだ。昏い色は誰からの怨嗟を含んだ瞳であるのか。その言葉は、彼が作り出した全てのモノを否定しているのと同義であった。
――徐晃隊がどんな想いで戦ってきたのか、月ちゃんと詠さんがどんな想いで共に居てくれるのか、彼が……どれだけのモノを切り捨ててきたのか。この人はそれを全部否定した。なんて傲慢。矛盾を貫くなら貫き通せばいいのに、あなたはそこで妥協するんですか。
「私は最初から助けられる人を一人でも多く助ける為に戦ってる。だから……私は曹操さんと鳳統ちゃんの敵、なんだと思う。誰かと誰かが手を取り合う世界を作る邪魔をするなら、最後に力を使ってでも止めさせて貰うよ。今まで死なせてきちゃった人達と、私に着いて来てくれる人達の為に……ううん、私が私として理想の世界を作り出す為にこれだけは曲げられない」
傲慢な言葉に聞こえるだろう。今回秋斗を信じ抜かずにそれを目指したと言われればそこまで。これまでも曖昧にぼかして来たと言われてもそこで終わる。
ただ、桃香はこの交渉の初めから最後まで……否、義勇軍を作る初めからずっと民の為の王であった。
一人でも多く、今の命が救われる選択を続けてきた。時には必要な犠牲も無意識の内に呑んできた。秋斗と話して、自身の責を自覚してから無意識から意識的に変わったが。
そしてこの交渉では華琳が脅しを掛けたから、自分の力が足りない事も理
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