彼女は雛に非ず
[3/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の思惑と次の提案を計算し、望む答えへの道筋を弾きだしていた。
「ならば徐公明の身柄の一時預けも追加、ではいかがでしょう。曹操様がこの方の忠誠をも手に入れる絶好の機会となるでしょう。劉備軍に戻るかどうかは曹操様とこの方次第となります。それでも足りない分は結果で示してみせましょう。黒麒麟の角と鳳凰の羽を以って」
「雛里!? そんな――」
「桃香様も愛紗さんも、これからの劉備軍にとって大きな不利益となるのでしたら私を斬って下さって構いません。それが出来ないのなら口を挟まないでください。朱里ちゃんは……分かってるよね?」
思わず口を挟み、しかし雛里が割り込むと愛紗と桃香は俯いてしまった。
彼女が劉備軍の為を思ってしている事。己が身を切る事によって、現在の莫大な借りを無くして正々堂々と華琳に歯向えるようにしているのだから責められる言われも無い。ましてや、華琳がそれに口を出す事を封じたのだからそれを止める事も、破棄する事も出来ない。大徳という民の期待による鎖は劉備軍にとって何よりも重かった。
――気に入らないなら斬ればいいと私に有利に働く逃げ道を残したのも見事。彼女は間違いなく徐晃の影響を一番に受けた軍師、覇王の元にいるべき存在に育っている。
雛里が華琳に対して最後に示したモノは、秋斗が個別で用意した対価を彼女も使えると言う事であり、それを間違わずに受け取った華琳は何も責めようとはしなかった。
「……一時預けの解ける条件は?」
「そればかりは曹操様とこの方の判断に任せます」
雛里は華琳の性格さえ見抜き、秋斗自体の逃げ場も残していた。
秋斗が目覚めた時に劉備軍に戻ると言えば彼女は何も言わずにそれの手助けをするつもりであった。そして……華琳と共に劉備軍を滅ぼして秋斗を手に入れる。しがらみを全て破壊して、本当の自由を手に入れさせる為にそれを行うと暗に示していた。
――これで後は一つを確認するだけで全てが終わる。彼女は私が持っている線を見抜けるのかどうか……。
「徐晃の意思は関係ないのかしら?」
少しだけ、雛里は哀しげに眼を伏せた。彼が何を考えているのか雛里にも分からず、その意思を自分のわがままで捻じ曲げる事になると理解して。
「この方の意思は……出過ぎた発言失礼致しますがもしやあなたも知っていて聞いているのでは? そうですね……城壁の上、とか」
無感情な瞳は華琳を計っていた。少し貶めた意趣返しを込めて覇王を試しにいった。
全てに気付いているのは朱里と桂花。彼女達の抱いているであろう感情は多く、しかし一つとして同一のモノは無かった。
片や、知っているモノが知らないモノへと移り変わり、自身よりも一歩先を言っているやもしれないと思う悔しさに、半身に近い存在と想い人が離れて行く事への懺悔
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ