第6騎 決裂
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合いながらも、火花を散らし、2合、3合と打ち合った。右に、左に剣を振りかざし、お互いの一瞬の隙を伺っている。
「我は、チェルバエニア皇国軍客将キルマ・トゥテルベルイと申す!」
一向に疲れを見せないキルマは、老練の武将の指摘に、素直に答えた。
「ほう、客将か!わしはアトゥス王国軍大元帥ヴァデンス・ガルフなり!」
キルマの答えに応じ、ヴァデンスもその名を名乗った。その瞬間、仮面から見えるキルマの眼が、今までにないほどに厳しく、鋭いものになった。剣勢が増し、キルマの剣をさばききれなくなる。
「大元帥だと!?それならば、アトゥスを貶めているのは、お前らか!?」
「なに!?」
ヴァデンスは、その問いを理解し得なかった。何故、敵であるキルマがその様な事を言うのか。
「英雄王の名を汚すのは、己らか!?」
その言葉と共に、重く、鋭く、速い一閃が、巻き上げられる水飛沫を切り裂いて、ヴァデンスに襲いかかる。ヴァデンスは、それに反応することが出来ず、長剣を持つ左腕の手首を強かに叩き付けられた。甲冑の甲が激しい音ともに壊れ、その下にあった肉を一刃で切り裂いたのである。ヴァデンスの左手首から上は無くなり、代わりに猛然と噴き出す血飛沫に取って代わった。野太い声が悲鳴を上げ、脂汗が身体中に吹き出す。そこに、止めを刺さんとキルマが、剣を振り上げたその時、チェルバエニア軍の右翼から悲鳴と怒号が上がった。
その悲鳴と怒号は、戦場の様々な音を食い破り、皆に届いたのである。それに気が付いたキルマは、そちらに目線を向ける。また、傷みで我を失いそうになるヴァデンスも、力を振り絞ってそちらを見やった。
彼らの二人には、いや、クッカシャヴィー河にいた全ての人間は、その河の上流より、砂塵を舞い上げて、恐ろしいほどの速さでこちらに突撃してくる一陣を見たのである。その一陣には、幾つかの旗が掲げてあった。それは全て、黒地の旗に、白い百合の花が咲いていた。
第6騎 決裂 完
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