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英雄王の再来
第6騎 決裂
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まるで、自分の心を渦巻く感情に翻弄されているかのように。
 彼は、その濁った目を私に向けて、囁くように言った。

「お前を・・・解放してやる。」
解放する?どういう事か。捕虜であり、先程まで「首を撥ねろ」と言っていた人間を解放するとは、どういう意図か。

「それは、どういうおつもりかな?」
私には、とりあえず探るしか方法はない。しかし、この正常とは言い難い表情を見せる人間の言う言葉を、にわかに信用出来るだろうか。彼は、私の声に対して、少しばかり声を大きくして答える。

「解放すると、言っている。・・・意味が解らないか?」

「いや、しかし・・・捕虜を解放するとは、安易に考える事が出来ないではないか。」
本当に解放されるならば、幸運ではある。しかし、何も無しにとはいかないであろう事は、十を数える子供でも、理解が出来るに違いない。
 異様な雰囲気が包むこの部屋は、絹擦れの音さえも聞こえるほどに、静寂が支配している。私の問いに対して、彼は何も答えない。それ故に、身動きが一つ取れないほどに、静まり返っているのだ。しかし、それは突如として破られる。

「私は!・・・エルが許せぬのだ。あの兄を兄とも思わぬ、侮辱と侮蔑の態度。そして、何よりも、私を見下すような軽蔑の目が!ずっと、許せなんだ!・・・何度、あの目をくり貫いて、その眼球が無くなった空虚の穴を、短刀で血みどろにし、何かを理解出来なくなるまでほじくりかえしてやりたいと思ったか。・・・ふふふ、ふは。考えただけで、笑いが込み上げてくるわ。」
・・・狂っている。そう、思わざるを得ない。目の前のヒュセルの姿を、声を聞いてるだけで、自分の背中に氷塊が落ちたように、寒気を覚える。彼は、エル・シュトラディールに対する“怒り”で、我を失っているのか。

「・・・そこで、テリール・シェルコット。お前を逃がす代わりに、ある条件を出す。それを呑むと言うならば、無傷で解放してやる。」

「条件?」

「そうだ・・・。何、簡単な事だ。私に取っても、お前に取っても得となる事しか、あるまい。」
彼はそう言って、懐から一枚の丸まっている羊皮紙を取り出した。その取り出した羊皮紙を、まるで“宝物”を見るようにうっとりと、眺めている。ひとしきり、それを眺めてから、私に手渡した。

「こ、これは!?」
私は、驚愕する。羊皮紙に書かれていたのは、エル・シュトラディールがクッカシャヴィー河までの進行路を示したものだ。

「それを、お前にやる。アカイアと合流する際の手土産とすればいい。ただし、それを基に、エルを殺せ。悪くない話ではないだろう?お前たちに辛酸を嘗めさせた相手を殺す事が出来るのだ。行動が分かる“それ”があれば、容易な事であろう?」
そう、悪魔の囁きのように口にするヒュセルの顔を見やる。先程と
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