月が隠れている内に… その二 ……それでも、
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れないほどの醜態を晒してしまったことだろう。
だが、卒業してから約十年、それなりに経験を積んできたと言うわけではないが、明らかに他人事のように構えている。
季節は八月中旬、悲しいことにもう雪男にも彼女にも関係なくなってしまったが、現役高校生である彼らにとっては貴重な夏休み、それも後半だ。
祓魔師の卵にはそんなことは関係ないと厳しく切り捨てられれば良いのだが、そうは出来ない人物が隣にいる。
「ご紹介します。彼女は漆谷恵里さん。この後の夏祭りにも同行していただきますので、手騎士を目指す人も他の称号を目指す人も質問がありましたら、この機を逃さないように」
それでは本日の授業はここまでと、号令を済ませて何事もなかったように靴音を廊下に響かせて歩く後ろ姿に数秒経ってから小走りで付いて行った。
「ちょっ…おっ、奥村君っ!」
彼には今さっき十年ぶりに再会した。
………………結婚したことも知らなかった、知らせなかった仲の自分たちが『夏祭りに同行する』と何時打ち合わせをしたと言うのだろう。
しかし、彼は腰から一杯に提げた試験管を軽快に薄暗い廊下に轟かすだけでこちらを振り返らない。
「……ねえっ」
「っ!?」
ようやくその背に追いついたのは階段の踊り場だった。
「夏祭りって何?私、今日、聞いたばかり」
何とか追いつこうとした為か、教室からずっと胸の内で考え続けていた為か、息が乱れて変な日本語が口を吐いて出た。
こちらを数十分ぶりに振り返った雪男は、少し意外そうな表情を浮かべている。
「あっ……その……すみません。あの場ではああ言った方が生徒たちに変に詮索されないと思いまして…」
すみませんでしたと、実に申し訳なさそうに頭を垂れる姿をされると怒るに怒れない。
そもそもそんな気など毛頭ないのだが…。
彼が言うには夏休みも関係なく塾に参加せざるを得ない青少年たちが気の毒で、授業の一環も兼ねて正十字学園の近くである神社の夏祭りに行くことにしたそうだ。
それに何故自分がと思ったが、確かにあの場ではああ言った方が幾分かは怪しまれないだろう。
……恋にも、性にも敏感になる年頃、何を考えるか解ったものではない。
「か、顔を上げてくださいっ。べっ…別に怒っているわけではないのでっ」
「ですが…」
「そっ、それよりっ、お祭って何時集合ですかっ?」
……我ながら、馬鹿だと思う。
もう誰かの隣で笑っているであろう目の前にいる人物は、恵里が恋焦がれた奥村雪男ではないという
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