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渦巻く滄海 紅き空 【上】
七十二 前夜
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ながらも、ノックの音に急かされる。扉を僅かに開け、その隙間から彼は廊下を覗き見た。

其処に立っている人物の姿を目にした途端、自来也の口から驚きの声が漏れる。
「…!珍しいな、お前から訪ねて来るなんて…」

共に連れ立って外へ向かう二人の後ろ姿を、宿の猫が通路の片隅で静かに見送っていた。

























空が白ばんでいた。

薄明に包まれた山向こう、空に残る有明の月が徐々に翳んでゆく。東雲の微光の中、夜明けを知らせる清々しい空気。
仄かな明かりが夜を染め上げ、どこからか鳥の声が聞こえてくる。夜と朝の境は静けさに満ちていた。


だがその静寂を轟音が切り裂いた。


大きな湖のあちこちで巨大な水飛沫が上がっている。凄まじい音を立てて激しく飛び散るそれらはもはや水柱に近い。その凄まじい音を立てる飛沫はある一つの影を追い駆けていた。

次々と立ち上る水柱を掻い潜る。自身の術を尽く避ける人物を鬼鮫は驚嘆の眼差しで眺めた。
「流石ですねぇ」

笑った瞬間、飛んでくる手裏剣。それを己の愛刀で叩き落とす。そして印を結ぶや否や、やにわに手を水面につける。指先から流れるチャクラ。

「【水遁・五食鮫】!!」
途端、足下の水からザバリと飛び出す。何れも鋭い歯を剥き出しにしている五匹の鮫。
一気に対象目掛けて突進してくるそれらは水中に潜んでよく見えない。どこから来るのかわからぬ恐怖が獲物を襲う。
しかし突如、鬼鮫はハッとして印を結んだ。
「【水遁・水陣壁】!!」


瞬間、四方から襲撃する水の塊。回転する水塊は圧縮しており、殺傷力が高い巨大な牙のようだ。
(何時の間に【水遁・水牙弾】を!?)
辛うじて発動した水の壁で、なんとか身を守る。突然の不意打ちに驚いたものの、【水陣壁】で容易に打ち消せた事に鬼鮫は内心落胆した。
だがすぐさま彼はククッ、と口角を吊り上げる。


視界を遮る水の壁。その術を解いたと同時に鬼鮫の左頬を何かが掠った。つうっと血が滴る。
「【水牙弾】を囮にして、私の鮫達を仕留めるとは…流石、イタチさん」
「…………」
【水牙弾】で鬼鮫の気を逸らした瞬間に【五食鮫】の鮫を尽く仕留め、おまけにクナイまで投擲してきた張本人。
ボンッと軽い破裂音と共にあちこちで立ち上る白煙を目にして、鬼鮫は肩を竦めた。自身を狙ったクナイが沈みゆく様を、目を細めて眺める。


かつてコンビを組んでいた、そして今現在追われる身となった――うちはイタチ。

表情一つ変えない彼を鬼鮫は愉快げに見据えた。ニィ、と口許に弧を描く。
「前々から貴方とは一度手合わせしてみたかったんです」

一方的に話し掛ける鬼鮫の顔をイタチは無表
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