第八章
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第八章
「どうしてこんなところに」
「政治家辞めたのよね」
妻はこの事実を話した。
「そうだったのよね」
「そうだよ。落選してね」
そうしてだ。政治家を辞めざるを得なくなってだ。
そのうえでだ。消息不明になっていた。しかしであった。
今彼はここにいた。家の隅で蹲りだ。そうして何かをぶつぶつと呟いているのだ。
その彼を見てだ。連は言った。
「これは」
「危ないのね」
「精神が崩壊しているね」
そうなっているとだ。連にはすぐにわかった。彼は精神科医ではないがだ。それでも医師だけにおおよそのことがわかったのである。
それで今の管が異常であることに気付いた。彼は。
「もうこれは駄目かな」
「元に戻らないのね」
「うん、精神的にはもう駄目だと思う」
管を見ながらまた話す。
「そうだったんだ。政治家を辞めて」
「あの時相当攻撃されてたから」
妻が自分が管について知っていることを話した。
「疑惑も次々に明るみに出て」
「主民党もね」
選挙での惨敗後程なく無惨に崩壊してだ。分裂と主要幹部の失脚を繰り返してだ。最早残党が泡沫政党として存在しているに過ぎなくなっているのだ。
「実家からも見捨てられて離婚もして」
「こうなってたのね」
「じゃあ池田っていうのは」
連は今の管を見てすぐにわかった。
「偽名だったんだね」
「それだったのね。じゃあ電話してきたのは」
「実家だったのね」
そのだ。管の実家のことだ。
「あの家から電話してきてだったのね」
「患者として面倒を見ろってことだね」
「そうみたいね」
「そうだったんだ。今の彼をね」
そのだ。精神が完全に崩壊してどうしようもなくなっている管をだ。
だが、だ。ここで問題があった。連はだ。
「僕はね」
「精神科医じゃないわよね」
「うん、だからね」
それでだというのだ。彼はだ。
「僕はちょっと。完全にはできないわね」
「どうしようかしら」
「知り合いに精神科医の人がいるから」
その知り合いに連絡をしてだというのだ。
「それでその人に面倒を見てもらうよ」
「そうするのね」
「その連絡をしてきた人の電話番号は確認したよね」
「ええ、それはね」
確認しているというのだ。そのことはだ。
「多分。この人の実家の人ね」
「そうだろうね。じゃあそちらに連絡してね」
「それで話をしましょう」
「そうしようか」
こう話してだった。彼の往診はしなくなった。実際のところ連ではどうしようもなかった。それでだ。彼もこうするしかなかったのである。
実家の方も厄介払いの意味もあってだ。そのことに電話の向こうで納得してだ。管を精神病院に送った。これで話は終わったのだった。
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