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万華鏡
第六十六話 ゲリラライブその一
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            第六十六話  ゲリラライブ
 ハロウィンのゲリラライブの用意は万端整っていた、だがあくまでゲリラライブなので部長はライブ前日にもこう言うのだった。
「いい、絶対によ」
「はい、前日でもですね」
「ライブ前日でも」
「そうよ、秘密厳守よ」
 それは絶対にというのだ。部長は部室で部員達に釘を刺す。
「いいわね」
「はい、わかりました」
「口にチャックしています」
「若し喋ったら」
 ここでだ、部長は怖い目を作ってこう言った。
「マンギョンホン号に乗ってもらうわよ」
「それで北朝鮮送りですね」
「そうなるんですね」
 どんな船かは言うまでもない、通称地獄への送り船である。
「そうよ、若しくは何処かの魔法の国の最下層よ」
「いや、あそこに行ったら死ぬじゃないですか」
「北朝鮮もそうですけれど」
「あそこに行ったら魔法使いの奴隷どころじゃないですよ」
「まさに糧じゃないですか」
「地獄ですよ」
「そうなるから覚悟しろってことよ」
 こう言うのだった、喋れば五等の位にだというのだ。
「わかったわね」
「よくわかりました」
「そうなりますか」
「そうよ、とにかく喋らないの」
 このことは絶対にというのだ。だがだった。
 ここで書記が横から部長にこう言った。
「隠すのはいいけれど」
「もうっていうのね」
「学園中にばれてるわよ」
 クールな口調での突っ込みだった、実に。
「誰も知ってるわよ」
「それでもよ。秘密よ」
「秘密なの」
「そうよ。誰もが知っていてもね」
 それでも秘密にするというのだ、部長は意固地さを作って語る。
「秘密にするからね」
「そういうことにするのね」
「あえて秘密にしてもよ」
 それでもだというのだ。
「何をするかいいから」
「何かゲームみたいね」
「そうよ、これもまたライブのうちよ」
 そのうちの一つだというのだ、あくまで。
 そうした話をしてだった、ライブ前日もあくまで秘密にしておく彼等だった。
 それは琴乃達も同じだ、誰にも言わなかった。しかし誰にもそのことを言わなくてもだった。もう学園の誰もが知っていた。
「明日よね」
「明日ライブよね」
「さて、軽音楽部が何をしてくれるか」
「楽しみよね」
「そうね、本当にね」
「どんな演奏かね」
 こう話していた、だが軽音楽部の面々が来ると話をあっさりと引っ込める。そのことを話してそのうえでだった。
 彼等も秘密にしていた、しかし軽音楽部の面々も耳がある。琴乃達もそれは同じでそうした話を聞いてだった。
 昼食の時だ、食堂でこう話すのだった。今も五人で食べている。琴乃は焼きそば定食を食べながら四人に言った。
「皆わかってるわね」
「ええ、もうね」
「もう皆知ってるわ」
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