暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第三十二話 昨日の敵は今日も敵
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の浦田よりキャッチャーの梶井に注目しているのは宮園。梶井は口数少なく、淡々と浦田をリードしていた。必要以上に動かず、声も出さず、自分の仕事を徹底するような態度が見えた。

(変わってないなぁ元次郎。もうちょい元気ありゃあ、2年からレギュラーにだってなれただろうに。)

梶井は実力はある。しかし、その人となりが司令塔に向いているとは宮園には思えなかった。

(その割には、こいつキャッチャーに拘るんだよなぁ。何でだろうな。)

宮園は首を傾げた。


ーーーーーーーーーーーーーー



浦田が三人でサクサクと相手の攻撃を終わらせた次の回、二死からこの男が打席に入る。

<3番キャッチャー梶井君>

178cm73kg。捕手としてはややスリムな体型は、これもまた宮園とほぼ同じ。右打席に立った梶井は、グリップの位置が低くスタンスの狭い、力の抜けた自然体でボールを待つ。

(絶好球!)
カーーーン!!

インコースを突いてきた速球を、肘を畳み体をくるっと回して梶井は捌き切った。そのスイングの速いこと速いこと。ショートの頭上を越えるかというライナーがグングン伸びてそのまま左中間を破っていった。その弾道は、もはや“光線”である。

(まーた元次郎が打ちよったわ。あいつバッティングはマジでええけ、監督に言われる通りサードやってりゃ2年の夏からレギュラーなれたんに。何でか、キャッチャーしかやらん言うんやけな。そんなに僕の球ば捕りたいんか。)

2塁ベース上で相も変わらず淡白な表情を保っている梶井に微笑みを向けながら、商学館のエースで4番の浦田が打席へと向かった。表情や所作にチャラさを見せてきているが、どうやら浦田はDQNでは無いらしい。海洋の選手に比べると随分と殺気が感じられない。

カーン!
「回れ回れーっ!」

しかしそれでも結果は残す。しっかりと捉えた打球はレフト線に弾み、2塁ランナーの梶井がホームに帰ってくる。

(やっとレギュラーに、それもキャッチャーでレギュラーになれたんだ。こんな所で負ける訳にはいかん。宮園……)

ホームを駆け抜けた梶井は、観客席で試合を見ている宮園の方を見た。

(俺はもう一度お前と勝負がしたい。あの頃と同じ、キャッチャー同士でな。)

淡白なはずの梶井の目に闘志が漲る。
その視線を宮園はしっかりと見返した。

(あの頃とは、もう違うよな。お互い。)

2人が感じた事はそれぞれ。
しかし、中学からの因縁は、高校でも続く。
それを意識している者が居る限り。

(負けんぞ、宮園)

梶井は自軍ベンチに帰っていく。
そこには、高校で得た新しい仲間が居た。
そしてその仲間と共に、旧い敵にも立ち向かっていく。それは梶井が望んだ展開だった。


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