運命の出会い、なわけない
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られたくらいで、なんともない。自分が培った戦争の経験が今こそ試される時ではないか……さぁ抜刀しろ臥薪、小僧を黙らせろ臥薪。
「う……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
無理だ。無理に決まっている。相手はただの子供ではない。ミュータントだ。いや、ミュータントなど自分の敵ではない。では、なぜ?
なぜ逃げている? なぜ立ち止まらない。こんなことが知られたら、自分は一生外を出歩くことなど不可能だ。
決まっている…………。
あいつは、あの『城島』の生き残りだからだ……!
※※※※※※
「よーし、いい感じにかっこいいな俺」
エリザは少年を一目見てわかった。バカであると。
今、少年は小太刀を放り投げ、おかしなポーズをとりながらぶつぶつと自分を賛美している。その様子は不気味でありながらどこか憎めないような感想を抱かせるから不思議だ。
「おい、奴隷、お前黄金の林檎知っているか?」
「…………?」
「なんだ日本語しゃべれないのか? 屑だな。あーあー」
少年はそのガサツな見た目とは違い悠長なフランス語でエリザに聞いた。
黄金の林檎はどこありますか、金髪の淫乱女?
「…………イ、インラン、チガウ! Pomme…オナカ、スイテ、タベタ」
「なに?……ほんとに屑なのかお前は!! 吐け! 今すぐ吐け! さもなければ吐けーーーー!!」
「ア、イ、イ、イタイ! イタイ、イヤ! シナイデ!」
勢いで取り乱してしまった冥星は怯えるエリザをしばらく見つめたあと、ゆっくりと近づき優しくその髪を……引っ張った。
「vous! ナニスル! イ、イタイ!」
「冥星さまだ」
「メイセイ?」
「さまをつけろ! Aristocratie! 冥星、さま!」
「メイセイサマー?」
「お前、俺の、奴隷、よろしいか?」
「い、イヤ……ワタシ、モトメル、ジユウノミ」
「無理、林檎、吐くまで、俺の、奴隷」
「イヤ……」
「だったら売り飛ばす、お前、いらない用済み、わかる?」
少年はエリザにとって王子様ではなかった。ただ、ほんの少し自分の買われる経緯が違うだけだった。意地悪で、鬼畜で、卑怯な、自分よりも一つ年下の男に買われただけ。
その時は、ただそれだけだったのです。
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