運命の出会い、なわけない
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た。ここが最後の力を使う時だと判断した。この機を逃せば自分は一生愛玩動物のように扱われ、骨の髄まで家畜としての教育を施されるのだろう。
かみついた、爪を立てた、男なら……金的を狙った。まるで猛獣のようにエリザは男に立ち向かう。
「ぐ……お前、俺の優秀な遺伝子が一〇〇万は死んだぞ、今」
アホなことを言い倒れる男に見向きもせずただひたすらにエリザは走る。何かを叫んでいるようだったが無視した。逃げる、ただそれだけが己の使命。駆け抜け、駆け抜け、駆け抜けた先にようやく出口を見つけた。広い門だ。ここを潜り抜ければきっと自由になれる。
「――――ネズミが忍び込んだようだな」
エリザは悲鳴を上げたかった。しかし声が上手く出ない。長年しゃべらずにいたせいか、喉がつぶれてしまったのかもしれない。ただ、強い力で地面に押さえつけられているはわかる。捕まったのだ。つまり、自分にはもう永遠に出口は訪れない。永遠に……。
「金髪、あきらめるな。お前は今日から俺の奴隷だぞ。根性を見せろ」
俊足――――と呼びにふさわしい勢いで何者かが一人の男に飛び掛かる。猫のように素早い勢いで刃物を一振り――一瞬のうちに男の腕が一本棒切れのように吹き飛んだ。悲鳴と共に血しぶきが辺りを舞う。
「――――言い忘れていたが、俺は五番目に人殺しが好きなんだ。なぁ、大蔵臥薪……」
少年は笑っていた。血の雨で濡れた己の髪をかきあげ、銀髪の悪魔は老人に微笑みかける。どちらが本物の悪鬼か、勝負をしよう。そう言っているようだ。
「こんなことをして、ただで済むと思っているのか!」
「こちらのセリフだぞ、大蔵臥薪。人身売買など、己の器が知れたな。しかも黄金の林檎などどこにもないではないかこの嘘つきめ!」
「小僧の分際で、儂に刃を向けたな……おのれ、おのれ!」
「なんだその刀は? 剣先が震えているぞ? どうした! 裏切り者の大蔵臥薪!! その刃で我が同胞たちを打ち取ったのだろう!? それとも己はただ見ていただけか……あの炎の中、あの時の俺のように!」
少年の目はギラギラと輝いていた。その瞳の奥にはしまいこんだはずの憎悪があふれ出ている。今、目の前の老人を殺せと誰かがつぶやく。
「……お、お前は……まさか」
「……俺はめんどくさいのが嫌いだ。貴様がこれ以上俺の目の前でうるさいハエのように飛び回るなら容赦はしない。静かにしているというのなら俺が盛大にお前の財産を貪ってやろう」
「ふ、ふざけおって」
「えらべぇ!! 大蔵臥薪!! 貴様に選択権はないぞ!!」
ここにきて、大蔵臥薪は一体何に対して怯えているのだろうか? 目の前には小僧一人。奴隷一人。自分にとっていとも簡単に捻りつぶすことのできるガキ共だけではないか。
たかが腕一本取
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