運命の出会い、なわけない
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エリザは。
彼女の場合、静かに暮らしていただけだった。確かに親は革命とやらに加担して物資の運搬などを秘密裏に行っていたらしい。ミュータントとして生まれた自分が、少しでも生きやすい世界に変えたいという小さな願望を抱いて、革命に命を燃やした。
「ぁ……めぇ……な、さ……ぃ」
「おい、また泣いてるぞ……さっき薬を打ったばかりなのに」
「哀れだねぇ……ミュータントとして生まれてこなけりゃ普通に暮らして普通の人生が送れたのに」
周りの人の言うとおりだ。自分がミュータントという化け物に生まれてこなければ、きっと両親は生きていた。自分は小さな家で貧しいけれど幸せに暮らせていたのかもしれない。
エリザはこの二年、ただ両親に対する贖罪に費やした時間しか覚えていない。意識がある一五分間がその時間。あとはただお人形のようにあちこちを触られ、着替えを着せられ、また脱がされる。
「臥薪さんも、人が悪いねぇ……一億なんて出せるわけねぇだろうが」
「どうせ、見せたいだけだろ。自分にはこれほどの物を手に入れるだけの資産があるって」
「か〜〜……腹立つねぇ……いっそのこと、傷物にしてやろうか?」
「馬鹿者、そんなことよりもいい方法があるぞ」
「なんだよ、言ってみろよ」
「簡単だ。奪うのだ。盗賊のように、泥棒のように」
「おいおい相棒! そりゃ無理ってもんだ。こんな物抱えてどうやって逃げ回るってんだ! すぐに捕まっちまうよ!」
「どうせ盗品だろう? 盗んだところで足などつくまい。いっそ盛大に見せてやればいい、これは俺の物だと」
「…………お、俺はいいよ。見てるだけで満足だから。が、頑張んなよ、相棒」
「そうか? なら遠慮なくいくぞ。ちなみにお前の相棒はさっきから床で爆睡しているぞ」
「……え?」
※※※※
「みーつめるキャ○アイ! っと。いっちょあがり」
エリザの目の前には白髪の少年が刃物を手に持ち笑っていた。見張りをしていた男たちを瞬時に眠らせ、自分を抱きかかえたままさっさとその場を去っていく。何が起こっているのかわからない。ただ、わかるのは連れ去られているということ。どこへ?
「は……な、ち……て……」
「断る! それよりも、黄金の林檎なんてどこにもなかったぞ! 糞が! やっぱりお前を売った金で焼き肉パーティっていう設定なのか!」
どうやらこの少年も自分を売るためにさらったらしい。自分にいったいどんな価値があるのかわからないが、金に換えられるほどの値打ちがまだ残っているのは嬉しかった。
嘘だ。悲しい。死にたくなるほど。
「い……やぁ…………い……やぁ」
「うぉ!? 鼻水つけられた! 海星みたいなことするやつだな! ったくこれだから女ってやつは……」
エリザは全力で抵抗し
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