嵐の前の静けさ……
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その日の夕方、酔っ払い達を整備長以下整備班の方々に手伝ってもらい、部屋に叩き込んで、ようやく自由に成ったのは六時を回った辺りだった。
夕食変わりに硬いレーションのクッキーをかじりながら、タブレット端末を動かす。(しかもハンガーの隅に体育座りでである、これが原因で可哀相な娘呼ばわりされた事が有る)
私の乗る¨Fー5J 撃震¨は、足周りのパーツ損耗率が高い。そこで、戦闘データを洗いざらい見直し、無理の無い戦闘機動を研究していた。
しかし、研究すれども行き着く答えは¨第二世代機、又はそれに準ずる機体以上の性能を要する¨と言う、身も蓋もない物ばかりであった。
「やっぱり、レスポンスと考える動きとの誤差かぁ……」
速い話が、思考に機体が着いて行けてないと言うことなのだ……
技術的な話に成るが、戦術機はオペレーション・バイ・ワイヤ、またはオペレーション・バイ・ライトと言われる情報伝達システムと機械制御技術、コンピューター制御技術の塊と呼べる代物なのだ。
が、第一世代と呼ばれる機体は大戦初期に開発・運用が開始された旧型で有り、その開発コンセプトは機動力を重視して作られた物でなく、重装甲故に反応も遅い。(これは、コンピューターの性能も低いからなのだが…)
その結果、操縦に対して機体の反応が遅れたり、無理な運用に成ると言う訳だ。
「仲宮少尉、また自己分析でもしてたのか?」
そんな声が聞こえ振り返ると、何時も見慣れた人物が柱に寄りかかったまま此方を覗いていた。
「実守中尉ですか…、要件は手短にお願いします」
「つれないなぁ……それより、アレの動きが活発化してるらしいからな、数日中には出撃になるみたいだぜ……」
普段、軟派でおちゃらけた印象が強い実守中尉がこんな話をするとは思っても見なかった。
だが、彼が危機感を覚える程と言う事は、本格的にBETAが進行を開始したのだろう……
「隊長は「まだ寝てるよ」…ですよね……」
何時もの事ながら、頭が痛くなる現実に溜め息の一つも出てこない……
「何を焦ってんだか知らないけどさ、気ぃ楽に行こうぜ」
じゃねぇとトチるぞ、と言われて
「そんな事っ…ないです……」
そう言おうとして、思い当たる節が有り強く言えなくなる。事実、一度演習で大ポカをやってしまった事が有るのだ……
「肩の力抜けて無いと、いざという時に動けねぇからなぁ」
「そんな事くらい分かってます」
私は恥ずかしさから、紅潮した表情を中尉に悟られないようにソッポを向くのであった……
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