暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第三十一話 これが三龍野球
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のチャンスに、打席には6番の宮園。願っても無いチャンス到来に、その表情には性格の悪そうな笑みが浮かんでいる。
その初球。

「!?」
「は、走ったー!!」

2人のランナーがスタートを切った。
宮園はバントの構えに切り替える。
ここでスクイズを仕掛けてきた。

コツン!

城ヶ島が咄嗟に低めに外そうとするも、宮園はしっかり腰を落として一塁側に打球を転がす。城ヶ島が素早くそのバントに対応してマウンドを駆け下り、打球を拾う。三塁ランナー越戸はホームに滑り込む。

(やらせてたまるか!)

城ヶ島は焦っていた。ギリギリのタイミングのホームに、持ち替えもままならないまま投げる。指にキチンと引っかかっていないボールは高く浮き、川道のミットの上を越えていく。

「やったぞ!やったぞ!」
「回れ回れー!!」

バント処理の上手い城ヶ島にとってはあり得ないような大暴投。川道がバックネットまでボールを拾いに行く間に二塁ランナーの太田までホームイン。バッターランナーの宮園は二塁まで行った。
4-1。さらに点差は広がり、そして海洋の守備に綻びが出た。川道と城ヶ島のバッテリーは呆然と立ち尽くし、バックを守る野手は言葉を失う。

(……ワシのミスや)

海洋ベンチでは、高地監督が落胆した表情で天を仰いだ。

(ランナー二、三塁やないか。今のスクイズは奇襲でも何でもない。何でワシが気づいてやれんかったんじゃ。子どもらに落ち着け落ち着け言いよったが……)

高地監督は自軍と反対側のベンチの最前列に仁王立ちする、華奢な女を睨む。三龍高校野球部監督、浅海奈緒を睨む。

(このアマの掌の上で転がされよったんは、ワシも同じやないか……)

浅海はそんな高地監督の視線を意に介する事なく、内心つぶやいていた。

(面白いもんだなぁ。この回の守り、海洋の守備は決して悪くなかった。バスターエンドランを決められても一つだけの進塁に留めていたし、飾磨の当たりなんて普通センター前ヒットの所をアウト一つとれてるんだ。でも、今のエラーは頂けなかったな。2点差ならまだこちらも安心出来ないが、3点差となるとワンチャンスじゃ厳しいだろう。その3点目は無用なエラーで“与えた”一点だ。ウチに揺さぶられたように思ってるかもしれないが、それは違う。君らが勝手に自滅したんだよ。)

打席には、一際大きな体をした左打者が入っている。7番の鷹合。エースとして敗れた夏の雪辱を誓い、試合前から燃えに燃えていた。そんな鷹合に、浅海はもう何のサインも出さなかった。
ニッコリ微笑んで、拳を握って見せた。

(行け!君が決めてこい!)




自分自身のエラー、それも得意なはずのバント処理のエラーに、城ヶ島もかなり動揺したのだろう。この鷹合への投球は、軒
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