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Myu 日常編
ミュータントの説明はもっと先になるので
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重も比例して高くなるのは自明の理。何を慌てることがあるのか。

「田中太郎」
「…………」
「田中太郎、返事をしなさい」
「おい、田中太郎、呼んでるぞ!!」

 冥星は大声を張り上げて、いるはずのない人物の名前を連呼した。自分を見つめながら平々凡々極まりない名前を呼び続ける姫は滑稽だったが、残念ながら自分には冥星という親がつけてくれた、かもわからない素晴らしい名前があるのだ。当然無視することにした。

「あなたのことよ、田中太郎。自分の名前を忘れるほど愚かな生き物なの?」
「愚かなのは貴様だ。なんだそれは? コロコロコミックで連載されていた宇宙人か? 俺には冥星という神聖で超かっこいい名前があるんだ。覚えておけ愚民」
「それで、太郎は隼人たちの友達なの?」
「無視するな雛人形の分際で。あいつらは手下だ。俺がいずれ作るカリスマニート社会建国のために必要な人材なんだ」
「くすっ……バカみたい。そんなのできっこないわ」
「不可能を可能にするからこそ面白いのだ。俺はめんどくさいことは大嫌いだが、めんどくさいことをしないためにする努力は全力で頑張る男だからな」
「ただのわがままな子供じゃない」
「子供だ。だからあのロリコンにも敵わない。生活も一人では無理だ。毎日、誰かに感謝して生きなくてはならない」

 凛音をおぶったまま冥星は進んでいく。やがて彼女の部屋らしき場所に案内され、粗末なベッドの上に寝かせた。周りには生活品らしき物は一切なく、学校のランドセルと教科書、情け程度に机があるくらいだ。まるでそれ以外の物に興味を持つな、とでも言いたげだなと冥星は関心した。


「なるほど、いい環境だ。奴隷を飼っておくには適した場所だな。合格点を与えてやりたい」
「……私には意見できる権利はないの。この子を授けてもらうことしか、できなかった」
「一体何の言い訳をしているのかわからんが……奴隷を飼うためには適した場所だと、俺は褒めたのだがな」
「本気で言っているの!? 私たちは同じ人間よ!? ミュータントだからって、凛音だけこんなところで生活しなくちゃいけないなんて、おかしいと思わないの!?」
「思わない。そいつは奴隷で、お前は飼い主だ。ミュータントだからとか、人間だからとかそんなことは関係ない。上と下があり、強い者と弱い者がいる。強い者の上にはまた強い者がいて、弱い者の下にも弱い者がいる。お前がそいつの上にいて、ロリコン爺の下にいるようにな」
「…………子供のくせに、随分落ち着いているのね、冥星君」

 姫は仇を見るような目で冥星を睨みつけた。世界がこうあるべきだ、と信じて疑わない者の目だ。冥星は姫と目を合わせることなく淡々とつぶやく。言葉に意味などない。あるのは理想ではなく現実の世界。どこまでいっても現実の世界は変わらない。
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