第百六十話 四人の男達その十二
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顕如は雑賀が放った密偵から彼の文を受け取っていた、そのうえで彼が石山御坊に来ることはよしとした。
しかしだ、それでもだった。彼は本願寺の客将となっている龍興や下間一族、長い間本願寺に代々仕えている彼等に問うた。
「闇の服の門徒達とな」
「左様です」
「その者達が盛んで戦っております」
龍興も下間家の者達もこう顕如に答える。
「むしろ灰色の者達よりも」
「遥かにです」
「わからぬ」
顕如もだ、彼等のことはこう言うのだった。しかも首を傾げさせて。
「闇の色とな」
「左様です」
「長島でも近江でもいました」
「無論北陸にも」
「本願寺の色は灰色じゃ」
それは絶対だとだ、顕如は言い切った。
「その他の色はない筈じゃ」
「では闇の色は」
「その色は」
「ある筈がない」
こうも言うのだった。
「断じてな」
「ではあの者達は一体」
「数はやけに多かったですが」
「あの者達は何者だったのでしょうか」
「一向宗の旗を持っていましたが」
「鉄砲を多く持っていたそうじゃな」
顕如は今度はこのことについて言及した。
「そうじゃな」
「左様です」
「鉄砲もです」
「あの様な高いものはそうそう持てぬ」
例え多くの門徒達を持ち財政も豊かな本願寺でもこう言う程だ、鉄砲はそれだけ高価なものなのだ。しかしである。
その闇の服の門徒達はというのだ。
「何千丁もか、合わせて」
「はい、それだけです」
「かなり持っていました」
「織田家でもそれだけ持っておるか」
顕如は怪訝な顔で首を傾げさせて言った。
「果たして」
「この石山にもかなりありますが」
「他の門徒達が持っておるか」
「それはとてもです」
「考えられませんな」
「何度も言うが鉄砲は高価じゃ」
だからだというのだ。
「百姓達が滅多に持てるものではないが」
「最近は鉄砲鍛冶も増えて国友等でも造られていますが」
「それでもですな」
「そうそう持てるものではない」
これはどうしてもだというのだ。
「尚且つ闇の色は」
「上杉殿の黒ではなく」
「その色でした」
「闇のう」
その闇についてだ、顕如は今度はこう述べた。
「そういえば親鸞上人がこの浄土真宗を開かれてからまつろわぬ者達を退けてこられたが」
「古事記や日本書紀に出て来るですか」
「あの者達ですか」
「あの者達はもうおらぬ筈」
顕如は彼等についてはこう考えていた。
「では何者じゃ」
「門徒達にしてもですな」
「怪しいですな」
「そもそもわしは門徒達が無駄に死ぬことは許しておらぬ」
顕如は確かに信長と戦をしている、しかし無辜の民達に災厄がかかることは許すところではない、それで彼等にもなのだ。
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