第七話 三人目その五
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「それでも。顔も見たことないし何処の誰かも知らないし。しかもあたしにとって孤児院の院長先生達が親みたいなものでさ」
「恨むことはないのね」
「ああ、孤児院で悪い思い出もないしさ」
このこともあってというのだ。
「別にな」
「そうなのね」
「そもそもあたしどうも恨みとかの感情は強くないみたいだな」
そうした感情があることは間違いないにしてもだというのだ。人間ならそうした感情があることはどうしても避けられない、恨みや憎しみといった感情をその心の中に抱いているのもまた人間という生きものだからだ。
「幸いさ」
「薊ちゃんさっぱりしてるからね」
「執念深くはないよな」
自分を振り返っての言葉だ。
「いいことだよ」
「そうね、それでなのね」
「そんな顔も何処の誰かもわからない人を恨んだことはないよ」
一度も、というのだ。
「孤児院も幸せだしさ」
「そうなのね」
「ああ、別にさ」
こう言うのだった。
「あたしは」
「そうなのね」
「そうだよ、それでさ」
薊はあらためて菖蒲を見て彼女に言った。
「菖蒲ちゃんは養子か」
「その通りよ」
「やっぱり本当の親御さんはわからないんだな」
「孤児院に赤ちゃんの頃にいてね」
「誰かに預けられてだよな」
「そうよ、八条グループの孤児院にね」
「あたしと一緒だな、いた場所は」
八条グループと聞いてだ、薊は言った。
「八条孤児院か」
「そうね、場所は違うけれど」
「そうだよな、八条グループか」
「面白い縁ね」
「全くだよ、とはいっても八条グループもでかいし」
世界的な企業グループだ、しかも慈善事業にも積極的に関わっている。
「それも相当にな」
「孤児院も幾つも持っているから」
「そういうこともあるか」
「そうね、考えてみれば」
「そうだよな、偶然にしても」
「そうね」
「いや、あたし達結構以上に奇妙な縁で結ばれてるな」
あらためてこのことを認識した薊だった、腕を組みしきりに考える顔で話す。
そしてだ、その薊に裕香が言ってきた。
「力のこともわからないし」
「そうそう、それもさ」
「謎が本当に多いわね」
「あたしも菖蒲ちゃんも何で力を持ってるんだろうな」
炎や水氷を出す力だ、このことが最もだった。
「気ならまだわかるけれどな」
「私達の身体の構造もね」
「サイボーグとかじゃねえよな」
この可能性をだ、薊は半ば真剣に考えた。
「まさかと思うけれど」
「そういうのはこれまでの身体検査でわかるでしょ」
「レントゲンとかでか」
「そう、わかるわよね」
裕香が薊に話す、無論共にいる菖蒲にも。
「そうしたことは」
「身体の中に何かがあれば」
「機械とかね」
「だよな、言われてみれば」
「ええ、そういう
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