第七話 三人目その三
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「私のね」
「ああ、太らないっていう」
「そうなの、だからね」
「お母さんは今もすらりとしているの」
菖蒲が話してきた。
「そうなの」
「そうなんだな」
「元々カロリーを計算したお料理を作ってるから」
「他の栄養バランスのこともね」
「お母さんのお仕事は料理学校の先生だから」
「おいおい、いいなそれ」
薊は菖蒲の話を聞いていささか羨ましそうに述べた。
「それじゃあ菖蒲ちゃんも健康だろうな」
「私はね。けれど」
「けれど?」
「お父さんはビールが好きだから」
「お父さんはそこが困るのよね」
菖蒲の母も苦笑いで言うことだった、このことは。
「ビールはあまりよくないのよ」
「プリン体が多いですからね」
裕香が何故ビールが駄目なのかをすぐに察して言ってきた。ビールはよく飲まれる酒の一つだが健康上気になることもあるのだ。
「それで痛風になるから」
「そう、だからお父さんはね」
「痛風になっているとか」
「ならない様に気をつけているの」
事前にというのだ。
「なってからじゃ遅いから」
「だからですか」
「そう、ビールは飲み過ぎると怖いのよ」
「お父さんは無類のビール好きだから」
ここでまた言った菖蒲だった。
「お母さんも心配しているの」
「大変だな、そりゃ」
「お酒でいいのは焼酎かワインなのよ」
菖蒲の母の言葉だ。
「そのどちらかなのよ」
「よくそう言われますね」
「何につけても飲み過ぎないこと」
酒は、というのだ。
「お酒はお薬にもなるけれど毒だから」
「そうですよね、どっちにもなりますよね」
「そう、だからね」
それでだというのだ。
「お父さんにもいつも言ってるのよ」
「ビールを飲み過ぎない様にですか」
「そうなの。あと食べたら身体を動かすことよ」
このことも言う母だった。
「食事と運動は両輪よ、菖蒲ちゃんにもいつも言ってるけれどね」
「だから私は健康」
「ずっと健康でいなさいね、健康あってのことだからね」
それでだとだ、菖蒲の母は娘に笑顔で話す。
「とはいっても今日のケーキは駅前のお菓子屋さんのケーキだから」
「それじゃあそのケーキをか」
「今からですね」
「ええ、食べてね」
こう笑顔で言ってだった、菖蒲の母は自分の娘とその友人二人に笑顔で話をした。菖蒲と話すそれは完全に仲のいい母娘のものだった。
その母娘を見た後でだ、薊は次の日屋上で裕香と共に話した、そこで言うことは。
「そっちの家族仲いいんだな」
「ええ、有り難いことにね」
「お互いに血のつながっていないことは認識していてもか」
「お父さんもね」
「それでもなんだな」
「ええ、私達は親子よ」
紛れもなく、というのだ。
「確かなね」
「だよな、いいな」
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