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万華鏡
第六十五話 ハロウィンに向けてその八

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「今でもいいと思うけれどさ」
「いいのね」
「何か足りない気がするよ」
「そうなのね、やっぱり」
「琴乃ちゃんもその辺りわかってるんだな」
「うん、自分でもね」
 そうだというのだ、だからこそ問うたと言ってもいい。
「何かね、足りないなってね」
「練習不足・・・・・・でもないよな」
 美優は琴乃に限ってそれはないと思った、琴乃は五人の中で一番練習熱心だからだ。それでこう言うのだった。
「琴乃ちゃんの場合は」
「どうかしら。最近飲んでばっかりだったし」
「それでかよ」
「今一つね」
 琴乃は自分ではこう言うのだった。
「よくないんじゃないかなってね」
「そう思うんだな」
「どうもね」
 首を傾げさせながらの言葉だった。
「ここ数日お家で練習してないし」
「だからか」
「そうなの、だからね」
 実は琴乃は家に帰っても時間があればギターを手にしているのだ、近所のことを考え夜は演奏しないがエアギターの要領で練習している。
 だが、だ。最近はというのだ。
「何しろ応援しながら飲んでばかりだから」
「それでっていうのかよ」
「そうじゃないかしら」
 首を傾げさせたまま自己分析をした琴乃だった。
「それでね」
「ううん、別にそうは思わないけれど」
「そうよね」
 景子と里香は顔を見合わせてこう言った。
「特にね」
「思わないわよね」
「そうかな」
「ええ、今の琴乃ちゃんはね」
「これまで通りよ」
 何も変わっていないというのだ、普段と。
「指の動きだっていいし」
「戸惑ってもないわよ」
「別にね、何処もね」
「悪くないわよ」
「だったらいいけれど」
「その曲が合わないんじゃないの?」
 ここでだ、彩夏は琴乃にこう言った。
「そうじゃないの?」
「今演奏している曲がなの」
「その曲今日はじめて演奏するけれど」
 今練習している曲のことではとだ、彩夏は琴乃に話す。
「その曲がね」
「私になのね」
「そう、合っていないんじゃないかしら」
 考える顔でだ、彩夏は琴乃に話す。
「琴乃ちゃんにね」
「そうかしら」
「そういうことってあるじゃない」
 音楽でなくとも、というのだ。
「何か合わないってことが」
「うん、何でもね」
「食べものでもね、妙に合わないとか」
「あるわよね、そういうのも」
 酒なら尚更だ、ワインにしてもその銘柄によって飲めたり飲めなかったりする。だから酒は難しいのである。
「じゃあ私はこの曲が」
「合わないんじゃないの?」
「リズム的には嫌いじゃないけれど」
 演奏してみてだ、そういう感触はないというのだ。
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